また、親になることのストレスの増加やより少ない子どもに投資する傾向も指摘されており、ある論文(※)は165人のシンガポール人女性へのインタビューで、子どもの人数を増やす選択肢が取りづらい理由について、次のような点を挙げている。

・子育てが長期的なものであるのに対して政府の補助金が一時的でしかないこと
・子どもの学術面での成功を確実にするためにはかなりの金銭的投資が必要だと認識していること
・有給産休を取得できても雇用の保障がないこと
・父親の育休取得についても経済的不安から取得しづらいこと

(※Shirley Hsiao-Li Sun, 2012, “Care expectations, mismatched: state and family in contemporary Singapore” The International Journal of Sociology and Social Policy; Bingley 巻 32, 号 11/12, (2012): 650-663.)

つまり、シンガポール人にとって子育てをするうえでの大きなハードルが、「お金がかかること」なのだ。前回記事では、塾や習い事に追われることによる時間のやりくりについてと、それが女性の就労を阻害する可能性について書いたが、外部資源の利用には当然お金もかかる。今回はお金の側面から見ていこう。

学校は無償なのに?

シンガポールは天然資源を持たず「人材」が唯一の資源として、教育に力を入れている国でもある。シンガポール人は基本的に全員が公立学校に通い、義務教育の小学校は無償、中学校も国民の学費は極めて安い。

では何にお金をかけているのか。小学生の子どもを持つ家庭にインタビューを実施し、匿名で処理することを条件に年収や教育費も支障のない範囲でシートに記入してもらった。

シンガポール人の世帯月収の中央値は約7700ドル(約62万円、2020年)。一方、インタビューをしたのは教育競争の様相を知るために中華系の大卒が中心で、共働きが多く、世帯収入は1カ月10000ドル(約80万円)を超えるケースが大半だった。

この人たちの月の教育費は、申告ベースで500ドル(約4万円)〜2000ドル(約16万円)。習い事などの相場はヒアリングしている範囲では、おおむね1時間で30ドル〜80ドル(2400円〜6400円)程度の幅があり、週4回で1種類あたり、月1〜2万円台前後というところか。これを何種類、何人の子どもがやっているかで金額に幅がある。

金融機関の管理職で、小学生の子どもがいるある40代の女性はこう語る。