今回のネットフリックスやディズニーとの提携によってソニーは、競合がひしめくストリーミング配信市場で自身が配信プラットフォーマーになるのではなく、ソニーが持つ人気コンテンツを有力な配信サービスに提供する戦略へと転換したといえる。

SPEの業績は、これまで大型の劇場映画がヒットするか否かで波があった。それが、こうした配信サービス向けの供給拡大をはじめ収益源の複線化により、安定的な収益を上げられるように変わってきている。実際、2020年度はコロナ禍で映画館での収入が激減したが、それでも前期を上回る営業利益を確保している。

テレビ事業にも力を入れる。ソニーは、映画やドラマなどを放送するAXNやアニメ専門のアニマックスなど、有力チャンネルの世界展開を進めてきた。これらは加入者から視聴料を徴収し、かつ広告収入も得られるビジネスであり、収益性は高い。人気が高まれば、番組派生のキャラクター商品の販売も伸びる。ソニーが注力するリカーリングモデルの模範例だ。

SPEは、世界80カ国以上で放送事業を展開していると見られ、多数のチャンネルを運営している。リーチしている加入者の総数は約9億人に達する。とりわけインドは放送事業の最大の柱で、収益の多くを稼ぎ出すドル箱市場である。

というのも、同社はインド人に最も人気のあるスポーツ、クリケットのプレミアリーグの放映権を握っており、ここで獲得した視聴者をAXNなどほかのチャンネルに誘導する戦略が好循環を生んでいる。

放送局にフリーハンドで番組を供給

テレビ番組の制作にも積極的だ。アメリカの3大ネットワークであるABC、NBC、CBSのほか、ケーブルテレビ局、最近ではネットフリックスなどネット配信事業者も顧客とする。ソニーは自前の放送局を持たないため、放送局の制約から自由なクリエーターを多く抱えており、その制作力を生かしてさまざまな放送局にフリーハンドで番組を供給できる強みを持っているのだ。

ソニーにおける映画事業の歴史は、約30年前までさかのぼる。ハリウッド映画大手の一角であるコロンビアピクチャーズを買収したのは、創業者である井深大氏、盛田昭夫氏の後継者、大賀典雄氏がCEOだった1989年のことである。コロンビアの買収はアメリカ国内で大反響を巻き起こし、『ニューズウィーク』は「日本、ハリウッドに進攻」とセンセーショナルに取り上げた。

1950年代にアメリカに進出したソニーは、ラジオ、カラーテレビなどのホームエンターテインメントのほか、CD・ウォークマンなどのヒット作を次々に投入し、アメリカ家電市場にソニーブームを巻き起こしていた。