グーグルが「Plex」と呼ぶ新しい金融サービスを開始した。いずれ日本でも導入されるだろう。これは、「組み込み型金融」と呼ばれるもので、銀行APIを通じてグーグルと既存銀行が共同作業を行う。

そこで得られるマネーの取引データを用いて信用スコアリングを行えば、送金・決済コストをゼロにすることが可能だろう。それは、銀行ATMに壊滅的な打撃を与える可能性がある。

昨今の経済現象を鮮やかに斬り、矛盾を指摘し、人々が信じて疑わない「通説」を粉砕する──。野口悠紀雄氏による連載第48回。

グーグルが新しい銀行サービスPlexを開始

しばらく前から、「シリコンバレーの大手IT企業が銀行業に進出する」と言われてきた。

最近、そのように見える動きが活発化している。

2020年11月、グーグルがPlexと呼ぶ新しい金融サービスを発表した。アメリカでは、2021年から正式導入された。

普通・当座預金の口座開設、デビットカードの発行、グーグルPay決済、個人間の送金、利用データ分析に基づくサービスなどが、1つのアプリで利用できる。

家計管理のパーソナル・ファイナンシャル・マネジメント(PFM)機能が付属しており、スマートフォンで撮影した領収書やGmailに送られたレシートを自動的に読み込み、カテゴリー別に家計簿にまとめてくれる。さらに、10万超の飲食店でアプリ経由の注文ができる。3万超のガソリンスタンドで給油が可能だ。毎月の口座手数料などはかからない。

日本では、スマートフォン決済の「pring」をグーグルが買収することが話題になっている。いずれ日本でも同種のサービスを提供するのだろう。

以上のことを表面的に見ると、確かに、IT巨大企業が、銀行業務に参入している。

では、これは、銀行業にとっての「黒船来航」なのだろうか?

実は、そうではない。

なぜなら、これはIT企業が独自で提供するサービスではなく、金融機関との共同作業だからだ。

グーグルPlexの場合、シティグループなど11の銀行が提携している。そして、銀行業務を担当する。

この仕組みの核になっているが、「オープンバンキングを知らない人に伝えたい基本」(2021年7月11日)で説明した銀行APIだ。これを通じてPlexは銀行口座にアクセスし、そのデータを利用する。

これは、組み込み型金融(または「埋め込み型金融」、エンベデッドファイナンス)と呼ばれるものだ。