鉄道ジャーナル社の協力を得て、『鉄道ジャーナル』2021年10月号「西九州新幹線 来秋開業へ」を再構成し、長崎本線・鳥栖ー長崎間を乗り継いだ記事を掲載します。

博多7時53分発長崎行き特急「かもめ7号」は、鳥栖から長崎本線に入り、続いて新幹線連絡の新鳥栖に停車すると風景は緑の田園となった。吉野ヶ里歴史公園をかすめて博多から40分で佐賀の高架駅に到着した。すると乗客の半分以上が一斉に下車した。時刻は8時33分で、身なりは軽装だから、ほぼ通勤と見て間違いない。

すっかり空いてしまった列車は、肥前山口で佐世保線を分けると単線区間に入り、その次に肥前鹿島に着く。

肥前鹿島は上下分離される在来線の中核

肥前鹿島駅は、これまで「かもめ」で通るたびに目に留まっていた。それほど目立つ主要駅かというと逆で、狭い島式ホームを上下線が挟むだけの小駅である。ただ、朱に塗られたホーム上家が目を惹く。それは祐徳稲荷神社にちなむもので、同社は日本3大稲荷の1つと称されている。

「かもめ」はこの先、約40分にわたり車内の動きもなく諫早に向かい、そこで区間利用者を加えて長崎に至る。それはわかっているので、ここは肥前鹿島に降り立った。下車したのは3人だけで、鹿島市の玄関というには駅前もさびしい。だが、“昭和”感満載の鹿島バスセンターからは祐徳稲荷や嬉野温泉、武雄温泉へのバスが、昨今の地方の交通環境からすれば少なくない便数で出ている。

そこでお稲荷さんを詣でたが、それはさておき、この肥前鹿島は今後、大いに注目される駅になる。

九州新幹線西九州ルート武雄温泉ー長崎間は、今年4月28日に「西九州新幹線」と営業時の路線名も決定し、工事は仕上げ段階にある。だが、佐賀県内の新鳥栖―武雄温泉間については、方式もルートも決まっていない。「一度も新幹線を望んだことはない」と山口祥義知事が言い切る佐賀県の特殊な状況がある。つまり、全国新幹線鉄道整備法(全幹法)に定められた地元負担分を支出してまで新幹線を整備するメリットは乏しい。