菅首相がこうした人事断行を決めたのは、党内の強い不満の対象となっている二階氏の幹事長交代で、岸田氏の勢いを削げると判断したからだ。しかし、党内では「菅首相が代わらなければ、衆院選は厳しいままだ」(若手)との声が噴出した。

追い詰められた菅首相は31日には議員宿舎で二階氏や森山裕国対委員長らと会談。党役員人事と内閣改造を行ったうえで、9月中旬に衆院解散に踏み切ることも検討していると伝えたとされる。

総裁選前に解散すれば、衆院議員がいなくなることで総裁選は自動的に衆院選後に先送りとなる。総裁選での苦戦が予想される菅首相にとって「一か八かの勝負ができる」(自民幹部)というわけだ。

「解散先行論」は無理筋だった

この会談を受けて、31日夜には各メディアが一斉に「菅首相が9月中旬解散の意向を固める」などと報道。これに対して岸田氏は「堂々と総裁選を実施すべきだ」と反発。党内からも「コロナ禍の中での解散先行は自民党にとって自殺行為」との声があふれ、菅首相も軌道修正を余儀なくされた。

そもそも、冷静に政治状況をみれば、「解散先行論は無理筋」(閣僚経験者)だ。ここにきて全国のコロナ感染は鈍化し、先行指標となる東京の新規感染者数も減少が目立つ。しかし、重症者数などから9月12日を期限とする緊急事態宣言の再延長は避けられそうもない。

菅首相はコロナと解散の関連性を問われるたびに、「コロナ対応が最優先」と繰り返してきた。緊急事態宣言下の解散についても「法律上はできる」と説明してきたが、「現実にはこの段階での解散は国民に対する重大な裏切り行為」(自民幹部)となることは間違いない。