この夏、新たに世界遺産に登録された北東北の縄文遺跡群を見てまわる機会を得た。

その道中、岩手県の久慈市から青森県の八戸市に向かって、今年3月に開通したばかりの三陸沿岸道路(八戸久慈自動車道)をレンタカーで走行していると、前方に八戸行の路線バスが疾走しているのが見えた。

「たしか、ここにはまだ高速バスが走っていなかったはず……」と調べてみると、その名の通り岩手県北部を地盤とするバス事業者、「岩手県北自動車」が8月7日から10月24日までのおよそ2カ月半にわたり、八戸駅と久慈駅を結ぶ高速バスの実証運行を行っていることがわかった。

八戸久慈自動車道を走る久慈駅発八戸駅行きの高速バス(筆者撮影)

八戸と久慈はJR八戸線で結ばれており、久慈からは三陸鉄道に接続して宮古・釜石方面につながっている。そのため鉄道のイメージが強く、少々意外な気がした。

しかし、考えてみれば、八戸は東北新幹線で東京と直結する青森県東部の拠点都市であるし、久慈市は観光路線として人気が高い三陸鉄道の北の玄関口で、岩手県の三陸北部の中心都市でもあるため、高速バスの需要も見込めると判断したのであろう。

ダイヤは1日4往復。所要時間は久慈駅から八戸の中心部(三日町)まで最短で58分と、1時間を切っている。JRは普通列車しかなく、運転本数は1日8往復あるものの、所要時間は約1時間40分で高速バスの2倍近くかかる。片道1350円(往復では2200円)という高速バスの運賃は、鉄道とほぼ同額である。

災害時の別ルートとしての役割も

青森・岩手両県でも新型コロナウイルスの感染拡大が進み、実証実験をするには好機とは言えないが、所要時間だけを見れば、国内のほかの都市間交通で起きている現象と同様に、高速バスが主要な交通手段になる可能性も高いと思われる。

もちろん、八戸線はこまめに停車することで沿線の高校生などの貴重な通学の足になっており、乗客のすべてが競合するわけではないが、この夏、大雨と土砂の流入の影響で八戸線が運休になったことを思えば、内陸部の高台を走る高速道路のほうが、事故や災害による影響が少ないと考えられる。新たな公共交通機関として、一定の役割を果たしそうだ。