アメリカや中国では、在宅のままで医療サービスを受けられる遠隔医療プラットフォームが爆発的に広がっている。ところが日本では、医師会の反対を主な背景として、ほとんど行われていない。深刻な高齢化が進む日本で、遠隔医療は最も重要なインフラであり、その拡大は急務だ。

昨今の経済現象を鮮やかに斬り、矛盾を指摘し、人々が信じて疑わない「通説」を粉砕する──。野口悠紀雄氏による連載第52回。

目を見張る最先端の遠隔医療

遠隔医療の技術進歩は、目を見張るばかりだ。

手術を遠隔でできる手術ロボットが登場している。

また、eICUというシステムでは、複数病院のICU(集中治療室)のベッドを、常時、センターから遠隔モニターし、患者の異常を早期発見する。

eICUでモニタリングして、患者の医療データを分析すると、早期に症状を発見して処置することができる、これによって死亡率を大幅に低下させることができる。

あるいは、地方の小さな病院のICUに脳卒中の初期症状がある患者が運ばれてきた場合、その病院とセンターの神経科医をつなぎ、神経科医がMRIを見て、血栓溶解剤を注入しても安全かどうかの判断を下すといったことも行われる。

アメリカでは、2020年に10億回の利用

上で見たのは、離れた場所の医師と医師、または病院と病院を繋ぐ仕組みだ。

これとは別に、「遠隔医療プラットフォーム」と呼ばれるものがある。これは、患者が在宅のままで、検査などの医療サービスを受けられる仕組みだ。

アメリカでは、コロナ禍で遠隔医療が爆発的に広がり、2020年にはコロナ前の30倍の10億回の利用があった。10万人あたりでは月3万回。2020年3月の診療件数全体のうち遠隔診療が占める割合は13%。これは2019年の0.15%の100倍近くだ。

遠隔医療プラットフォームの最大手は、ニューヨークの「テラドック・ヘルス」。患者がスマートフォンを使って個人情報を入力すると、希望の時間帯に希望する医師を選んで、画像や通信での診療を受けることができる。会員数は、7000万人にものぼる。

アメリカの遠隔医療プラットフォーム主要4社は、このほか、次の各社だ

・ニュアンス・コミュニケーションズ:AIを利用した医療ケア最適化
・アイリズム・テクノロジーズ:ウェラブルによる遠隔健康診断
・インビテコーポレーション:遺伝子データによる治療最適化

スタートアップ企業も続々と登場している。