――アメリカのファブレスも同じ悩みを持っているのですか。

アメリカは違う。最初の話に戻るが、アメリカでは大手電機が半導体をやめたり、半導体メーカーが潰れたりした場合、プロセス技術者が外に出る。多くがファブレスに移る。プロセス技術がわかる彼らが、客(ファウンドリー)の立場で工場に対して「なぜこのルールがあるのか」「なぜこの製造装置を使うのか」といじめに来る。最もいじめられたのがTSMCだ。

工場側の手の内がわかっている技術者を多く抱えているのがアメリカのファブレス。だから交渉力がある。歩留まりが悪かったら解析する能力を持つ人材が何人もいる。ファンドがそうした優秀な技術者をファブレスに紹介する。それがTSMCとの交渉力になるし、TSMCもそれに応えてレベルアップしてきた。人の流動性とエコシステムができている。

日本でもファブレスはあるが、生産プロセスがわかる技術者やパッケージがわかる技術者はいたとしても数人。そうするとファウンドリーの言いなりになるしかない。

しかも、アメリカのクアルコムやアップルはTSMCのファーストティアだ。TSMCが2ナノの製造装置を選別するときには彼らから承認をもらう。クアルコムは「この装置じゃダメだ。ASMLのこの装置を使え、設計基準はこうしろ」とTSMCに要求できる。

ファーストティアの顧客はTSMCに対して指導力を発揮して投資方針も変更できる。ルールも決められる。そうして開発した技術をTSMCはセカンドティアの顧客に展開する。そのときはTSMCが自分のルールでやる。日本企業はセカンドティアにも入れていない。

金融庁が日本の半導体を殺した!?

――ほかに日本の半導体が負けた理由はありますか。

金融庁の指導で100%子会社も含めて経理システムを一本化した影響が大きかった。富士通の場合、それまでは半導体部門の減価償却は定率法だったが、本社で統一するときに定額法になった。変更した瞬間は利益が出るが、その後は償却負担が重くて死んでしまう。

韓国や台湾は半導体産業に対して、減価償却と税制で手厚い優遇措置が整っている。日本はもともと減価償却の自由度が少ないところに、総合電機のようにビジネスモデルが違う事業の経理システムを統一してしまった。そうすると同じ中身でも利益が出ていないように見えるので投資もできず、捨てられてしまう。利益が出たら出たで税金で取られてしまう。