では、創業者と直接的な縁がないリーダーは、求心力をいかにして構築すべきか。これは、創業家の影響力がなくなった大企業だけでなく、親族の中に会社を承継する候補が見つからない中小企業にとっても重要な現代的課題である。

このような中にあっても、日本で創業家が大きな影響力を持つファミリービジネスが見直されている理由として、業績がダントツでますます存在感を増すトヨタ自動車の存在がある。

トヨタ自動車の豊田章男社長が、テレビ、YouTubeをはじめとするさまざまな主要メディアで見られるようになってから久しい。あの「トヨタイムズ」というオウンドメディア(Owned Media=自社で保有するメディア)でヒーローを演じている。オウンドメディアという言葉は、SNSと連動させたマーケティング手法として使われることが多くなってきたが、本来はパンフレットをはじめとするあらゆる広報宣伝媒体を指している。

「トヨタイムズ」はオウンドメディアの成功例と言えよう。批判や反発する声も耳にするが、好き嫌いがはっきりする現象は、それだけ認知度が高まっている証しでもある。

「トヨタイムズ」のCMに登場し、堂々と持論を述べる豊田社長の姿を見て、「なかなかいい社長になったね」と評価する先輩経営者がいる一方で、「創業家出身者だから、あんなに派手な振る舞いができるのでしょう。私が同じことをしたら、必ず反対勢力から足を引っ張られます」と本音を漏らすエグゼクティブも少なくない。

会社=家=人生

ファミリービジネスの優れた点の1つとして、強いコミットメント(関与)が指摘されている。ファミリービジネスのトップは、会社=家=人生、と考える傾向がある。豊田章男氏はスズキの鈴木修相談役(前会長)との対談で「社名と姓が同じであるという点で2人は共通していますね」と語り始め意気投合していた。会社へのコミットメントは相当強いようだ。

絶好調のトヨタ自動車とは逆に心配されている会社の代表例が、すばらしい技術を持ちながらも、それらが注目されず、コーポレートガバナンス(企業統治)の劣化ばかりが話題になる東芝と、組織だけは集中と分散が4半世紀ごとに繰り返されているが「組織は戦略に従う」どころか、戦略も組織改革も業績に結びつかず彷徨うパナソニックである。MCA売却やプラズマディスプレイパネル撤退に続き、津賀前社長時代になっても、車載電池や住宅事業など稼ぎ頭になると目論んでいた事業が計画通りに育たなかった。

東芝は、「財界総理」と呼ばれる経済団体の長を複数名輩出してきたが、創業者の名前さえあまり知られていない。一方、パナソニックは松下幸之助氏の存在感がいまだに大きい。つまり、創業家出身者が役員にいなくなったとはいえ、パナソニックは「創業家企業」の色が残る経営者企業と言えよう。それだけに苦悩も多い。