変な話、昨年秋にまだ人気が高かった菅内閣が解散に打って出ていれば、こんな形で退陣することはなかっただろう。しかし菅さんはワーカホリック(いわゆる仕事中毒)首相であった。仕事がしたくて仕方がなかった。これらが結果として、上記ランキングにつながったのだと思う。

菅内閣が残した遺産とは?

とはいえ、菅首相はわずか1年で退陣に追い込まれた。もちろん支持率低下のせいだが、その原因をひとことで言ってしまえば、コロナ対策への国民の不信感であり、この問題をめぐるリスクコミュニケーションの失敗であったように思える。

現在発売中の月刊誌『文芸春秋』10月号に、菅さんのインタビュー記事が掲載されている(菅義偉首相「正面からお答えします」)。察するに8月下旬くらいに収録されたものとみえて、この記事の中の菅さんはまだまだ意気軒高、みずからの手による解散にも意欲を見せている。

聞き手の船橋洋一氏(アジア・パシフィック・イニシアティブ理事長)は、インタビューの冒頭、いきなり言いにくいことを尋ねている。

「総理の記者会見については、『言葉が響かない』『聞かれたことに答えていない』などの声も聞かれ、評判は必ずしも芳しいものではありませんが、どのように受け止めていますか」

それに対する菅さんの答えは、「ああ、やっぱり」と感じさせるものであった。

「私自身、もともと能弁ではないし、そもそも政治家は『弁舌よりも結果だ』と。結果を残せばわかってもらえるという政治姿勢で今までずっと来たので、そういう考えが会見の姿勢に出てしまっているのかもしれません」「どうしたら国民の言葉が届くのか、もう一度一からやり直さないといけないと感じています」

「一からやり直し」という総理発言に対し、船橋氏もかなり面食らった様子であったが、政治家が国民とのコミュニケーションに失敗してしまうと、いくら結果を出しても評価されなくなる、という典型例であろう。そして菅さんは、(おそらく)このインタビューの数日後に事実上の退陣表明に至るのである。

新型コロナはやはり難物なのだ。人々は見えない脅威に怯えていて、自分たちの思いが政府に届いているかどうか不安に感じている。だからこそ政治家の発する言葉は重要になる。紋切り型の対応や、「棒読み」スタイルではやはりマズいのだ。

ちなみに菅さんはこの後、国連総会のために訪米する。9月24日には、日米豪印によるクワッド首脳会議に出席するとのこと。3月に行われたオンラインのクワッド首脳会議に続く、初のリアル会合となる。任期の最後まで「仕事中毒」を貫かれる覚悟のようで、これはこれでアッパレという気がする。

さて、自民党総裁選挙が始まった。ここで選ばれた新総裁は、来月早々に召集される臨時国会において首班指名選挙を受け、わが国における第100代内閣総理大臣に就任することになる。ワクチン接種体制やデジタル庁など、菅内閣が残した遺産を継承しつつ、内外の難題に立ち向かうことになる。ただし、「コミュニケーションスタイル」という菅さんの負の遺産には、くれぐれもご注意願いたい(本編はここで終了です。次ページは競馬好きの筆者が週末のレースを予想するコーナーです。あらかじめご了承ください)。