鉄道営業法上の刑罰法規が定められた目的には、もちろん列車運行の安全を妨げる行為を規制する目的もあるものの、付随的であり、主目的は鉄道利用に関する秩序違反行為を規制することにあると考えられている。

一方、新幹線特例法で刑罰法規が定められている目的は次の通りである。新幹線特例法でいう新幹線鉄道の定義は、主たる区間を列車が時速200km以上の高速で運転される鉄道とされており、線路内立ち入り等は極めて危険な行為である。

そこで、鉄道営業法の刑罰法規が目的とする鉄道利用に関する秩序違反行為を取り締まるということではなく、端的に列車運行の安全に対する妨害として評価して刑罰を定めているとされる(交通関係法令の刑罰法規の解説書である「注解特別刑法2交通編(2)」による)。

なぜ罰則が軽いのか

線路立ち入りの代償が軽いのは、鉄道地内立入罪としてわざわざ処罰する意味があまり大きくないということもあるとされる。線路内立入行為は、業務妨害罪や往来危険罪などの重い犯罪につながることも多い。

そのため、実際に列車の運行が妨害されたり危険が生じたりした場合には重い他罪で罰すればよく、鉄道地内線路立入罪だけを独立して処罰する必要が小さいということである。さらに、在来線や多くの民鉄では線路と他の土地との境が不明確な箇所もあり、柵などで周囲を囲まれていないところも多い。道床部分のレールの外側など、どこまでが線路でどこからが線路でないか不明確なところも少なくない。私見ではあるが、刑罰法規は処罰の対象となる行為を明確に特定する必要があるので、許される限界が不明という点も問題になるのではないかと思われる。

しかし、である。

最近は在来線の高速化が進んでいる。先に引用した「注解特別刑法」が書かれた時代は、在来線の最高時速は東北本線、北陸本線などの一部で120km、一般的には時速95kmとされていた時代であり、民鉄でも最高時速110kmの時代であった。しかしいまは、在来線の最高時速は130kmに引き上げられており、一部では京成電鉄の「スカイライナー」など最高時速160kmで運転されている列車もある。新幹線特例法でいう時速200kmに近づいている状況にある。

列車の高速化には保安装置の強化による安全確保が伴うとはいっても、やはり危険の増大もつきまとうから、より強力な安全管理が必要となる。