また、線路の構造の点でも、高架化を含めた整備の進行によって、線路内は運転に必要な機器等が設置された1つの独立した排他的な空間となりつつある。保安装置や運転システムの進化に伴って線路敷地内にも様々の高度な機器が設置されるようになり、線路内立ち入りが確認されると広い範囲で列車を止め、安全確認終了まで運転再開をしない時代にもなってきた。

東京都日野市の多摩川橋梁は定番の撮影スポット(編集部撮影)

現代では線路内の安全確保や列車の安定的な運行の確保がより強く求められるようになっている。具体的な危険や支障がないなら線路内立ち入りを軽く処罰してもよいという時代でもなくなっている。

刑罰の軽重を考えるとき、法律の必要性や正当性を根拠づける「立法事実」の検討や、他の刑罰法規との釣り合いも考慮される。

昔とは状況が変化している

「立法事実」はその時代によって評価が変わることもある。昔とは異なり現代では、線路内に人が立ち入った場合の危険性や鉄道事業者の対応はより厳しくなっている。とするなら、線路内立ち入りは、鉄道における秩序維持への脅威に負けず劣らず、列車の円滑な運転確保、鉄道事業者の正常な事業遂行に対する脅威ともいえる。そうすると、線路内立ち入りに対する刑罰の必要性や正当性を根拠づける「立法事実」に変化が生じ、刑罰の内容を検討してもよい状況にあるともいえる。

撮影目的で線路内に立ち入る行為があった多摩川橋梁(編集部撮影)

最近、侮辱罪(刑法231条)の厳罰化を法務大臣が検討する方針を示した。侮辱罪はやはり刑罰が軽く、現行では科料と拘留(1日以上30日未満身柄拘束される刑罰で、1カ月以上20年以下を原則とする有期懲役刑や有期禁錮禁固刑より軽いとされる)のみだが、昨今のSNSでの誹謗中傷被害の深刻化に対応するために懲役刑や禁固刑、罰金刑を設けることを検討するという。

これまでは軽い刑罰で対応すればよいとされていた行為も、行為に対する社会の考え方の変化により厳罰で対応すべきとなる場合もあるということである。