年間およそ11万台という数字は、2020年の販売ランキングでいうと、年間4位の「フィット」の9万8210台を上回り、11万8276台の「カローラ」の下。つまり、4位に相当する。

仮に、ヤリスクロスの2020年中の販売台数をヤリスシリーズから除外し、ヤリス単体でのカウントとすると、2位のライズを下回ってしまう。つまり、ヤリスクロスをヤリスに合算していなかったら、2020年のナンバー1はヤリスではなく、ライズであったのだ。

「ライズ」は167万9000円〜と、より手頃なコンパクトSUV(写真:トヨタ自動車)

もしも、ヤリスクロスが、ヤリスシリーズではなく、別個の名前を与えられていれば、2020年はダイハツ生産車が年間ナンバー1を獲得とする快挙となっていたといえる。

絶妙な発売タイミングもヒットの理由

ヤリスクロスのヒットの理由は、いくつも考えられる。まず、基本的にクルマのデキがいいことが挙げられる。当たり前だが、クルマのデキがよくなければヒットには至らない。

今は、BセグメントSUVをはじめとするコンパクトSUVが世界中で大人気になっている。そこにトヨタが世界市場を見据えて投入したのが、ヤリスクロスである。

デザインから走り、燃費性能(なんと最高30.8km/Lを達成)、先進運転支援システムの充実度まで、気合の入った内容で、しかも価格も手頃だ。ガソリン車であれば180万円から200万円台前半、ハイブリッドでも250万円前後というのは大きな競争力となっている。

ライバルのCX-3も189万2000円からとエントリー価格こそ近いが、燃費のいいディーゼルエンジンの上級グレードは、2WDでも300万円弱だ。

マツダ「CX-3」はクラス唯一ディーゼルエンジンを用意する(写真:マツダ)

さらに、2020年夏という販売のタイミングもよかった。最大のライバルとなるヴェゼルは、2021年4月にフルモデルチェンジを控えたモデル末期。CX-3も、デビューは5年も前でフレッシュさはない。

さらに2020年6月に登場した日産のキックスは、ハイブリッド専用車で最低でも275万9900円からと、価格帯がまったく異なる。

日産「キックス」は電動化パワートレイン「e-POWER」のみ設定(写真:日産自動車)

つまるところ、2020年のヤリスクロスには、ガチンコのライバルがいなかったのだ。無人の野をゆくがごとく、快進撃も当然のことだろう。

ちなみに、新型ヴェゼルが2021年6月に登場してからも、ヤリスクロスの販売は伸びている。月間数千台単位が、7月以降は1万台を超えているのだ。ライバルが登場すると、話題が集まって販売数が伸びるというのが、新車販売のおもしろいところである。