評価に当たって現段階で最も重視している基準は、気候変動に関する国連の諮問機関、IPCCが2018年に出したレポートだ。このレポートでは2035年から2050年までの間に、EVが内燃機関(ICE)搭載車に取って代わることを推奨しており、発表以降、アメリカ、ヨーロッパ、中国では急速にEVの導入が始まった。

Dylan Tanner/インフルエンスマップ エグゼクティブ・ディレクター、共同創設者。2015年にインフルエンスマップを立ち上げ、グローバルオペレーションの総責任者を務める。東京で環境コンサルタント会社(現在のERMジャパン)を設立した経験も。現在は英ロンドンに在住。インペリアル・カレッジで環境技術の修士号、キングス・カレッジ・ロンドンで理論物理学と数学の博士号取得(写真提供:インフルエンスマップ)

IPCCは2022年3月にレポートの内容を更新する予定だが、そこではより強力で具体的なゼロエミッション車、つまりBEV(Battery Electric Vehicle)および燃料電池車(FCV)の導入について指針を示すことになるだろう。

IPCCのレポートを受け、これまでに20以上の国がICEの販売を全面廃止する意向を表明した。

イギリス、ヨーロッパ連合(EU)、中国、アメリカのカリフォルニア州などはEVを主要な技術オプションとする新たな政策を始動し、アメリカやイギリス政府はゼロエミッション車販売に向けた補助金やBEV充電ネットワークへの投資などの目標を推進するための予算決定も行っている。

とくに充電ネットワークへの投資は政府が「BEVは好ましい選択」と考えていることの現れであり、とても重要な動きだ。

HV推進のためロビー活動をするトヨタ

――トヨタや日本の自動車メーカーは、あなたがたの調査ではどのように位置づけられるのでしょうか。

パリ協定と整合性のある政策に対する企業の立ち位置の評価で、トヨタは「D-」で最下位だ。ここではCO2排出量や脱炭素化の実績については考慮せず、あくまで国の政策に対するロビー活動について焦点を当てている。

アメリカのテスラを除き、世界の自動車産業全体でパフォーマンスが低いのは、一般的に自動車メーカーが主要市場での燃費効率、排出ガスの規制やゼロエミッション車の義務化、ICEの段階的廃止に関する政府の方針に反対しようとしているからだ。

過去5年間、規制への反対は、ドイツのフォルクス・ワーゲン(VW)やダイムラーなどによる不正行為としても現れている。しかしトヨタは現在、電動化のための主要な政策、たとえばICE廃止の期日などに反対し、HVの長期的な役割を推進するための世界で最も強力なロビー活動を行うプレイヤーとなっている。

ロビー活動や政策に対する影響の多くは、ヨーロッパのACEAやアメリカのUS Auto Allianceなどの業界団体を通じて行われている。テスラを除く大手自動車メーカーはすべてこれらの団体のメンバーだ。インフルエンスマップの格付け要素には、主要な業界団体の会員資格があることも含まれているため、ほとんどの自動車メーカーのスコアは同様に低くなる傾向がある。こうした業界団体は日本の自工会を含め、それ自身の格付けも低くなっている。

ロビー活動を評価するに当たっては、政府に向けた書簡や議会の証言など、公的な資料に当たっている。一部、報道機関のインタビューによる受け答えなども参考にしている。