米中貿易戦争により幕を開けた、国家が地政学的な目的のために経済を手段として使う「地経学」の時代。

独立したグローバルなシンクタンク「アジア・パシフィック・イニシアティブ(API)」の専門家が、コロナウイルス後の国際政治と世界経済の新たな潮流の兆しをいち早く見つけ、その地政学的かつ地経学的重要性を考察し、日本の国益と戦略にとっての意味合いを、順次配信していく。

日米同盟グローバル化の契機となった「非対称型脅威」

9.11から続く長い対テロ戦争の中核にあったアフガニスタン介入から、アメリカは撤退した。アメリカは9.11を「21世紀型の戦争」と捉え、非対称型脅威に対する新しい安全保障戦略を形成した。国家対国家の比較的合理的対応が可能な安全保障戦略が、非合理でかつ小規模な被害をもたらしうる対象を、脅威の中核として見なさざるをえなくなったからである。テロリストがアメリカ中枢を攻撃した戦略的インパクトはそれだけ甚大だった。

アメリカが非対称型脅威に対抗するためには、アメリカの安全保障政策の再構築、積極的な対外介入、グローバルな協調が不可欠だった。アメリカ政府は世界的なテロネットワークの打倒を掲げ、アフガニスタンに直接介入し、欧州諸国や現地政府と協力して中東・北アフリカ地域に介入した。アメリカの国防費は海外戦費を含め大幅に上昇し、アメリカ軍は対テロ任務や対反乱軍作戦に多くのリソースを配分した。

9.11は日米同盟がグローバルに拡大する契機となった。有志連合による「不朽の自由作戦」の支援のため、海上自衛隊はインド洋での補給支援活動を実施した。対テロ特措法(2001)では、それまで周辺事態法で事実上の地理的制約のあった対米(対有志連合諸国)支援(協力支援活動=物品及び役務の提供)を「現に戦闘が行われていない」条件において、グローバルに展開可能となった。自衛隊はその後もイラク人道復興支援、ソマリア沖海賊対処等、地球規模の活動を実施した。