しかし、総裁選が進むにつれ、最大のライバルだった岸田文雄氏との差がどんどん縮まった。岸田陣営が党員・党友全体の4割近くを占めるとされる職域党員への多数派工作に全力投球したからだ。しかも、保守派のマドンナと呼ばれた高市早苗氏や、河野氏以上の党改革を訴える野田聖子氏への党員・党友の支持も日増しに拡大した。

その結果、9月29日の投開票での党員・党友票の配分は、河野氏169票、岸田氏110票、高市氏74票、野田氏29票となった。河野氏の得票は全体の44%、岸田氏が29%、高市氏と野田氏の合計で27%という結果だ。

その一方で、議員票ではトップの岸田氏が146票、2位が高市氏の114票で、河野氏は86票の3位。その結果、議員票と党員・党友票の合計を争う1回戦では、岸田氏が河野氏に1票差の1位となり、その時点で河野氏の敗北が確定した。

河野陣営は「敗因は党員・党友で圧勝できなかったこと」と肩を落としたが、投開票直前の河野氏の表情はすでに負けを覚悟しているようにも見えた。

「広報本部長をよく引き受けた」との揶揄も

そこで注目されたのが、悲願を達成した岸田・総理総裁の党・内閣人事。総裁選中の「他の候補者を重用して挙党体制を築く」との公約も踏まえ、高市氏は党政調会長、野田氏は内閣府特命担当相(地方創生、少子化対策、男女共同参画)・女性活躍担当相、こども政策担当相、河野氏は党広報本部長に起用された。それぞれ一定の要職ではある。

岸田氏は河野広報本部長について「抜群の発信力を生かして衆院選での自民の顔になってもらう」と起用の理由を語った。しかし、岸田氏周辺からは「河野氏は断ると思ったのに、よく受けた」と揶揄する声もあった。

河野氏が所属する麻生派を率いる麻生太郎副総裁は「まず、雑巾がけに徹することだ。それが次につながる」と激励。しかし、「広報本部長は選挙が終わればやることがなくなる」(自民幹部)のが実態で、来夏の参院選以降は存在感が薄れるのは避けられそうもない。

河野氏は10月1日の菅義偉前内閣の最後の定例閣議後の記者会見で「どんな仕事が与えられても全力で務める」と吹っ切れた表情で語った。広報本部長として作成して同11日に公表した衆院選向けのポスターでは、岸田氏の笑顔を大写しにした写真を中央に据え、「新しい時代を皆さんとともに。」と、岸田色を前面に押し出してみせた。

河野氏はこのキャッチコピーについて「総裁の肝いりだ」と解説。「私のポスターも(党本部の)6階に貼ってありますから」と笑顔で付け加えて、存在感もアピールした。

「次」を目指す河野氏にとって、最大の課題は自民党内の信頼獲得だ。衰えない国民的人気をテコに、選挙戦での応援に東奔西走することが、次期総裁選での勝利につながることを自覚しているようにみえる。