下取り品があると購入商品が安くなるという取引で従来からあるのは、自動車販売の場合だろう。今、乗っている自動車を下取りに出して新車を購入するという買い替えはよくある。その場合の下取り価格とは、下取りに出す車を中古車市場での価値に基づいて査定して下取り価格を決め、その価格分を新車の購入価格から値引くというものだ。

しかし、最近のテレビ・ネット通販等で見られる下取りでは、販売会社は下取り品は廃棄すると言っている。すなわち、下取り品に市場価値がないのに大幅な値引きがなされる。そこで疑問に思うのは、そもそも下取り品がないときの通常価格とは何なのか、下取り品がなくても値引きできるのではないかということだ。

廃棄することが明らかな商品の場合は問題ないのか

数年前に、筆者が兼任講師として指導する立教大学法学部消費者法ゼミのゼミ生がこの問題を調べたことがある。ある商品に下取り価格をつけて、販売商品から値引くのはマーケティングとして事業者の自由だが、一方で、財産的価値がなく、廃棄することが明らかな商品に下取り価格をつけて、その分を引く行為は、不当な二重価格ではないかといった疑問からだ。

景表法では「優良誤認」と「有利誤認」を主な不当表示として規定している。簡単に言うと、「優良誤認」は商品の品質等に関する不当表示、「有利誤認」は価格などの取引条件に関する不当表示だ。

二重価格は、「有利誤認」として問題になることがあり、消費者庁は「不当な価格表示についての景品表示法上の考え方」(価格表示ガイドライン)で考え方を明らかにしている。例えば、販売実績のない価格を「通常価格」としたり、メーカーが公表していない価格を「メーカー希望小売価格」として比較対照価格に用いる場合等には不当表示とみなされる。

下取り値引きの場合は、実際に下取りなしの価格設定が事実であれば問題はないと消費者庁は判断していると思われ、この問題で同庁が措置命令(旧・排除命令)を出したことはない。立教大のゼミで当時、公益社団法人全国家庭電気製品公正取引協議会に問い合わせたところ、「下取りなしの価格と下取り価格の両方の価格で実際に販売をしていれば有利誤認には該当しない」との回答を得ている。