コネクティング・ヨーロッパ・エクスプレスの運行から、鉄道業界は何を学んだか。

前述の式典でのスピーチの通り、鉄道が再び公共交通手段の中心となるためには、鉄道というシステム自体の自由化、標準化、デジタル化は特に必要なことであり、各国間の垣根を越えた連携も必要不可欠だ。

そして、今回は「認可の一元化」についても注目された。例えば、このイベントのために運行する車両は、協賛する6カ国の客車を連結して使用したが、その準備は昨年11月から始まっていた。当初は今年6〜7月に運行することを目標としていたが、車両は各国を通過させるためにそれぞれ認可の取得が必要で、その準備だけでも6カ月では足りなかった。

こうした車両の認可は、今までは各国の鉄道関連省庁へ申請するなど複雑な手続きが必要だった。それを欧州連合鉄道庁(European Union Agency for Railways / ERA)に一元化するというわけだ。これはメーカーにとっては大きなメリットで、ERAの認可を取得すれば、理論上その車両は欧州25カ国で運行が可能になる。

「欧州全体をつなぐ」にはまだ課題が

しかし一方で、それに伴う追加コストの発生をオペレーターが好まないという話も出ている。一部の標準的なレディメイド車両を除き、現在実際に運行されている鉄道車両の大半は、特定の地域で使用するためにカスタマイズされているケースがほとんどだ。特定の地域で運用するならそこできちんと稼働してくれれば問題はなく、別の地域で使用することは考慮しなくていい。もし、ERAでの認可一元化によるコスト上昇があるなら、オペレーターからの反発は不可避となるため、この方法は現実的には限られた方法となる可能性が高い。

そのほか、今回のイベントではイベリア半島(スペイン・ポルトガル)やロシアの軌間を採用している国(バルト三国)へは客車が直通できなかった。これらの国への直通運転のためには標準軌の線路を各国の主要都市まで延ばすか、あるいは軌間可変車両の積極的導入などに着手する必要がある。また、機関車も信号システムの関係で直通できず、各国がそれぞれ用意したが、この点についても現在導入が進む欧州標準信号(ERTMS/ETCS)を早急に整備する必要性が改めて認識された。

環境問題に端を発し、欧州では鉄道への注目と期待が日に日に高まっている。この先数年で、今回のイベントで再認識されたこれらの課題をどこまで克服できるだろうか。

著者:橋爪 智之