「海苔弁」と言えば、価格が安い割に満足感が高い、庶民的なお弁当の代表格だ。しかし今、1000円以上する高級海苔弁の人気が急上昇。ちょっとしたブームを引き起こしている。

その仕掛け人が、「刷毛じょうゆ 海苔弁山登り」(以下、海苔弁山登り)である。2017年にGINZA SIXで開業し、その後エキュート東京、新橋駅、築地直売所、上野などと展開を広げている事業だ。

シャケをメインとした「海」(1080円)。シンプルな味つけながら、海苔の香ばしさに引き立てられ、食材そのものの味が力強く口内に広がる。箸休めもていねいに作られており、残さず平らげることができる。またバランやアルミカップなどの仕切り材は使用されていないため、弁当箱がきれいにカラになるのも爽快感がある(撮影:梅谷秀司)

定番のメニューはシャケをメインにした「海苔弁 海」のほか、鶏の照り焼きの「山」、野菜で構成される「畑」の3種類だが、うなぎ弁当や押し寿司など、月ごとに新作を発売している。

海苔ごはんの上にシャケの塩焼き、ちくわの磯辺揚げなどがのった、イメージどおりの海苔弁そのもの。しかし味わってみると、海苔弁、そして「弁当」そのものの概念が覆ってしまった。その驚きに満ちた味の秘密はどこにあるのか。

そしてこのヒット商品はどのようにして生まれたのだろうか。

「スープストックトーキョー」の系列会社

同社の母体はスマイルズ。飲食やアパレルなどのブランドを複数展開するほか、コンサル・プロデュース事業を行う企業である。

展開ブランドの中でも「スープストックトーキョー」はスマイルズの黎明期である1999年より営んでいるメイン事業。20年でじわじわと広げてきた全国62店舗を堅持しつつ、冷凍スープの卸売・小売り、ECなど新たな領域へと成長中だ。

築地直売所では昼のみ、数量限定で「消費期限2時間」の弁当も販売される。通常は菌の繁殖を抑えるために冷やす工程を挟むが、 あえてその工程を省くことにより、シャケや鶏の照り焼きなどをよりふっくらとした状態で楽しむことができる(撮影:梅谷秀司)

そのほかネクタイブランド「giraffe」やファミレスの「100本のスプーン」など、多様に展開しているところが同社の特徴だ。なお、スープストックトーキョーは2016年、海苔弁山登りは2021年4月にスマイルズから分社化している。

では、こうした他のブランドと比べてもちょっと異質に感じられる「海苔弁山登り」はなぜ生まれたのだろうか。株式会社海苔弁山登り社長の我妻義一氏に聞いた。

「当社は社員一人ひとりの発想ややりたいことにチャレンジしていこうという社風が強い会社です。実は9年ほど前にJALの機内食として海苔弁を提案、搭載していただいたこともあり、私自身、弁当という形には昔から思い入れがありました。直接のきっかけとなったのは、2016年のGINZA SIXからの出店依頼。銀座一等地で庶民の弁当の代表格である海苔弁をやったら面白いのではないか、そんな思いつきからです」(我妻氏)