ただ、「回復」にはほど遠い。2020年10月比でみると、キリンは数%、サッポロが約1割、サントリーは約2割の減少となっている。ようは昨年と比べても悪化しているのだ。唯一、アサヒは昨年10月並みの出荷を見込んでいるが、「かなり強気にみているのだろう」(キリンHD広報)という声もある。

感染者数が減少しても、在宅勤務の浸透や会社での飲み会が減るなど、外での飲酒習慣は確実に変わっている。飲食店も感染対策として以前より客席数を減らすなどの対策をとっている。人手が確保できず営業を本格再開できない店も少なくない。

東京都は都の認証を受けている飲食店に対して、10月25日からワクチンの「接種済証」などの条件付きで、客の人数制限を撤廃。これまでは、認証店の酒類提供は午後8時まで、営業時間は午後9時まで、客の人数は1グループ4人との要請が出されていた。

しかし大手酒類メーカー関係者らの間では「飲食店でのお酒の飲み方はもうコロナ前のようには戻らないだろう」といった見方が多く、手放しでは喜べない状況だ。

ウィズコロナでの酒ニーズは「量より質」

ビールメーカー各社は目下、飲食店で失われた販売機会を家庭内で捉えることに力を入れている。そのカギは「量より質」だ。

アサヒは今年4月、開栓するとジョッキで飲む生ビールのように泡が出る「生ジョッキ缶」を発売。9月には「マルエフ」ブランドを投入した。同ブランドは、「スーパードライに次ぐビールブランドに育成する」と公言するほどの力のいれようだ。

ビールメーカーは家庭向けの販売に力を入れる(写真:編集部撮影)

「辛口なスーパードライが明日への活力系とすると、炭酸とアルコール度数が弱めでまろやかな味わいのマルエフは、家でリラックスしながら飲むことを想定した」(松山一雄マーケティング本部長)。コロナ禍で「プライベートな時間を楽しむ」ニーズに合うと話す。どちらの新商品も想定を上回る需要によって、供給が追いつかない事態となっている。

キリンは、3月に「クラフトビール」と位置づける「SPRING VALLEY 豊潤<496>」を家庭用の缶ビールで発売した。クラフトビールは、家でも多様な味わいを求める消費者ニーズに応える商品となる。

同商品の販売は収益性の向上にもつながる。クラフトビールの350ml当たりの参考価格は250円(税抜き)。同200円(税抜き)である通常のビールよりも価格が上だ。