第49回衆院選は苦戦必至とされた自民党が底力を発揮して単独で絶対安定多数(261議席)を獲得して勝利し、約1カ月前に就任したばかりの岸田文雄首相は、政権運営への自信を示している。しかし、党運営の要だった甘利明幹事長が小選挙区で敗北し、辞任に追い込まれたことが手痛い打撃となった。

岸田首相がすばやく、後任に茂木敏充外相の起用を決めたのは党内の混乱を防ぐ狙いだ。茂木氏は旧竹下派会長代行で、党4役の政調会長と選対委員長も経験しており、「党内バランス重視の安全優先人事」(自民幹部)とみられる。

ただ、投開票日の10月31日に、時間の経過とともに刻刻変化したのが自民党の議席獲得状況。一見順当ともみえる茂木氏起用も「岸田さんの心境が、当初の敗北不安から最終的な勝利による自信へと揺れ動いた末の決断」(周辺)だったとされる。

岸田首相は11月1日夕、甘利氏が前夜に過去に例のない現職幹事長の小選挙区敗北・比例復活となった責任をとって辞任の意向を示したことを受けて、後任に茂木氏を充てる人事を決断。同氏との党本部での会談で起用方針を伝え、茂木氏も受諾した。4日の党総務会で正式決定する運びだ。

茂木氏起用の狙いは政権運営の安定化

政府与党は首相指名選挙を行う特別国会を10日に召集する方針で、同日午後に第2次岸田政権が発足する段取り。それに先立つ主要派閥の事実上のリーダーである茂木氏の幹事長起用は、甘利氏辞任の混乱を最小限に抑え、政権運営の安定化を狙ったものだ。

岸田首相は10日の組閣まで外相を兼務する方針で、「後任外相はそれまでじっくり考える」としているが、後任には林芳正元文部科学相を軸に、岸田派からの起用で調整を進める意向とされる。第1次岸田内閣では同派からの再入閣がなかったことへの配慮とみられる。

衆院選結果が確定してからわずか半日での幹事長交代人事決着で、岸田首相は調整を長引かせての混乱を防いだ格好だ。ただ、政権発足時に政治とカネの問題が指摘され続けた甘利氏を党内の不安を押し切ってあえて起用しただけに、わずか1カ月弱での党の要の交代は、今後の政局運営での岸田首相の求心力に影を落とすことは間違いない。