金融マーケットやコンサルティングの世界には、さまざまなリスクに対して、独特の言葉で警告が発せられることがよくある。ブラックスワンもそのひとつだが簡単に紹介してみよう。

●ブラックスワン(Black Swan)……アメリカの5大投資銀行のひとつであった「リーマンブラザーズ」が経営破綻したときに、アメリカの中央銀行であるFRB(米連邦準備制度理事会)のグリーンスパン議長(当時)が指摘した100年に一度の金融リスクという言葉から、ブラックスワンという言葉が使われるようになった。

もともとは、元ヘッジファンド運用者のナシーム・ニコラス・タレブが、2007年に出版した「ブラックスワン」から来たものだが、金融マーケットでもそうした事態が起こることをブラックスワンと呼ぶ。もっとも、あのリーマン・ショックがブラックスワンであったかどうかは疑問の余地が残る。

ずいぶん前から、デリバティブと証券化技術を使った錬金術が、いずれ金融マーケットに多大な影響をもたらす可能性があることは指摘されていた。ほとんどの人が認識せずに、まさに青天の霹靂(へきれき)のような確率で起こるリスクのことをブラックスワンと呼ぶのであれば、リーマン・ショックはある程度予想されたものと言えるかもしれない。1929年のグレートリセッション=大恐慌にしても、その前の株価の急騰からすれば、必然的な株価暴落だったとも言える。

認識はしているものの、軽視した結果…

●灰色のサイ(Gray Rhino)……普段から認識はしているものの軽視した結果、一度暴走し始めると誰も手をつけられなくなる爆発的な破壊力を持つリスクを総称する言葉だ。不動産バブルの崩壊をはじめとして、国家や企業の債務の膨張による「デフォルト(債務不履行)」懸念などがよく指摘されるが、そのほかにも、すさまじいインフレや政策変更なども灰色のサイに含まれるかもしれない。

1990年の大蔵省(当時)が実施した、不動産バブルを抑えるための「総量規制」なども、政策変更による灰色のサイといっていいかもしれない。あるいは、1989年のベルリンの壁崩壊といったイベントも灰色のサイのひとつと言える。

中国恒大集団の信用不安も、中国共産党が昨年実施した政策変更を意味する「三道紅線(3つのレッドライン)」が原因だった可能性がある。不動産開発業界への締め付けによるものだった可能性が高い。政府の懸念が現在の信用不安を導いたわけだ。