さて、ここで考えてみたいのは、日本が抱える灰色のサイとはいったい何かということだ。当然のことだが、アメリカや中国が抱える灰色のサイもあれば、部屋の中の象もある。メディアの役割と言うのは、こうしたリスクの情報を事前に投資家や国民に提供することであって、その役割をきちんと担っていく必要がある。

リスクというのは自分にとって不都合なものであり、それを直視しづらいものだ。投資の世界や将来の設計を考えるときに、こうしたリスクをきちんと事前に捉えているかどうかが大きな意味を持っている。例えば、今世界が抱える灰色のサイを簡単に指摘しておきたい。

アメリカと日本で起こりうるリスクとは?

●アメリカ●

①株式市場の暴落懸念……史上最高値を更新し続けていることから、過剰流動性相場が続いており、調整局面に入ると一気に売られる可能性がある。株価暴落は今やブラックスワンでも、部屋の中の象でもない。

②過剰流動性の縮小懸念……新型コロナウイルス対策による経済の落ち込みを防ぐために中央銀行であるFRBが採用した量的緩和や資産買い入れ政策によって、債券市場や不動産市場にも大量のマネーが流れ込んでいる。リーマン・ショック時に起きたような過剰流動性となって、信用収縮を起こす恐れが懸念されている。

③地政学リスク……中国やロシアに対する敵対政策が以前ほど効力を発揮しなくなっており、地政学リスクの突発的な発生がアメリカ経済に大きな影響もたらす可能性がある。サプライチェーンの凍結など、アメリカの消費中心の生活様式に深刻な影響が出る。

●日本●

①少子高齢化……日本の経済規模であれば、すでに20年程度前から移民政策を転換して、大量の移民を受け入れる必要があったのだが、さまざまな勢力の思惑を考える自民党政権が続いたために、思い切った政策転換ができないでいる。アベノミクスを始めた安倍政権にそのチャンスはあった。ただ、観光客については規制緩和したために大量に押し寄せたものの、移民政策による優秀な人材の確保といった分野はそのままに放置された。人手不足、税収不足、経済成長の鈍化などなど、少子高齢化の影響は限りなく大きい。

②財政破綻危機……地方の財政赤字も含めて1200兆円を超える日本の公的機関の財政赤字は、金融マーケットに将来どんな影響を与えるのかよくわかっていない。最悪、金利が上昇して、国債発行ができなくなり「デフォルト(債務不履行)」を起こす可能性が、すでに20年以上前から指摘されている。さまざまな反論があって、きちんとその危機を認識されていないのが最近の傾向だ。いまや一部では"部屋の中の象"と化している。