監視資本主義という言葉の生みの親として知られるショシャナ・ズボフ教授による『監視資本主義: 人類の未来を賭けた闘い』の邦訳が上梓された。
600ページを超える大著でありながら、オバマ元大統領が選ぶ2019年のベストブックに選出され、世界的な話題となった本書で、ズボフ教授は私たちに何を伝えたかったのか。
邦訳刊行後、週刊ダイヤモンド「2021年ベスト経済書」で第1位に選ばれるなど、日本でも話題となっている本書から、20世紀のフォードによる革命と、21世紀のグーグルによる革命の違いについて、同書から抜粋・編集してお届けしよう。

それは、デジタル技術の当然の帰結ではない

『監視資本主義』の物語にとって重要なのは次の事実だ。「監視資本主義は、特別な時代に、特別な場所で、特別なグループによって発明された」

それは、デジタル技術が当然行き着く結果などではないし、情報資本主義にとって不可欠な展開でもなかった。それは歴史のある一瞬に、意図的に構築されたのだ。1913年にデトロイトでフォード社の技術者や職人が大量生産の方法を発明したのとほぼ同じである。

ヘンリー・フォードは、生産量を増やし、コストを劇的に下げ、需要を広げれば、利益を最大化できることを実証しようとした。それは、いかなる経済理論も既存の企業も証明できていない、商業の方程式だった。

もっとも、その方程式の断片はすでに精肉業や製粉業、ミシンや自転車、武器、缶詰の工場、および、醸造所で見られるようになっていた。部品の互換性や標準化、精密機械、ライン生産方式(いわゆる、流れ作業)に関する実践的な知識も増えていた。

しかし、フォードが思い描いた素晴らしいシンフォニーは、まだ誰も実現していなかった。

歴史家のデーヴィッド・ハウンシェルが述べるとおり、1913年4月1日、デトロイトで、史上初のライン生産方式が動き始めた。