12月20日にデジタル庁による新型コロナワクチン接種証明書アプリが公開された。わが国はG7で最も高いワクチン接種率を誇り、国民の79%がワクチンを2回接種済みだ(12月22日時点)。これだけの規模の医療情報が突如としてデジタル化されることはいまだかつてないことであり、わが国の医療情報データ基盤としての潜在的可能性の高い仕組みが誕生したこととなる。

証明書の具体的な規格としては、国内向けと海外渡航向けにはSMART Health Cards (SHC) が、そして海外渡航向けには、加えて、ICAO VDS-NCの形式で発行可能となった。すでに、アメリカとカナダでは SHCが、EUでは Digital COVID Certificate(DCC)が、中国では国際旅行健康証明がデジタル証明書の規格として展開されている。

このように、世界中で、デジタル証明書が普及することは、私たちの生活や社会経済にとってどのような意味を持つのだろうか。そして、その普及にあたっては何に留意すべきであろうか。

理念なき医療データ活用は失敗のもと

医療データを社会的に活用する際に最も大切なのは理念だ。ここでは、特に大切な論点として、本人によるデータ管理、偽造防止性を含めたデータの真正性、エビデンスに基づく政策立案、相互運用性、そして国際標準の確立について論ずることとする。

まず、本人によるデータ管理が重要だ。世界中でデジタル証明書が発行されている中、感染症に関する情報の把握を名目とした、国家による過大な監視への警戒も必要となる。個人がスマートフォンでデータを持ち、その内容へのアクセスも本人がコントロールすることを原則とすることは、個人データ保護に関する民主社会の国際的な潮流となっている。わが国も、民主国家として、専制的な監視国家とは一線を画さねばならない。

また、紙のワクチン接種証明書は偽造が容易であり、実際、偽造された紙の証明書が世界各地で問題となっている。悪貨が良貨を駆逐するのと同様に、偽造された紙の証明書が一定数登場すれば、ワクチン証明書への社会的な信頼は失墜する。これが紙ではなく、偽造ができないデジタル証明書の普及が喫緊の課題である所以だ。