ビジネスの視点では、地域貢献を軸にした展開を進めている。「やんばるアートフェスティバル」立ち上げの中心人物、よしもとエンタテインメント沖縄の和泉かな社長は「今年で5回目の開催を迎え、地元や沖縄県内のみなさまからのご評価は徐々に高まっています。アート、工芸品、特産品等に焦点を置いた地域との取り組みの好事例として、広げていきたい」という。

さらに新たな展開も描いている。吉本興業のマネジメント部アート・文化人事業部の杉本裕一部長は「今は主に『やんばるアートフェスティバル』のような芸術祭で外部のアーティストのアレンジ業務などをしていますが、今後はおもしろいと感じるアーティストのエージェントやマネジメント業務も少しずつ手がけたいと考えています。そのために、デジタル上で作品を紹介、販売できるアーティストプラットフォームも構築中です」と、力説する。

アートへのハードルを低くできる

大﨑会長は、アートへの取り組みをより深めていくうえでのお笑いにも通ずる信念を、いつもの自虐と冗談を交えた口調のなかに熱い思いを秘めてこう語る。

「やんばるアートフェスティバル 2021-2022」のメイン会場である大宜味村立旧塩屋小学校。「やんばるアートフェスティバル」は2021年12月18日から2022年1月16日にかけて、同会場含め沖縄県北部地域7カ所で開催 (筆者撮影)

「吉本興業がやることでアートへのハードルが低くなります。こむずかしい、わからないと思われがちなところが、『吉本がやっているなら冷やかしでちょっと見に行こう』ってなるかもしれません。そこから、行ってみたら楽しかったって思ってもらえるようにしたい。アートは子どもたちの情操教育につながります。子どもの頃に言葉で伝えられない、言葉では共有しにくい思いとかも、アート作品で表現できるということを体験できれば、感受性豊かに育っていくはずです。それが地域に根を生やしたものなら、地元に誇りを持って、大人になったらそれを生かしていろいろなところに羽ばたいていける。そうなればすごくうれしいです」

吉本興業がアートを発信することで、お笑いファンの若い世代をはじめ、それまで興味がなかった一般層への間口を格段に広げることになるだろう。それはアート界にとっても未来を切り開くひとつの道筋になっていくに違いない。

著者:武井 保之