SUBARU里山スタジオ内で、筆者は実際に野馬土手を見ているが「嶺岡西二牧の野馬土手は、外部から比較的入りやすい場所にあるため、貴重な研究資源だ」と日暮氏はいう。

また、この集いにも参加していた地元出身の写真家・水田稔氏は、現代の嶺岡牧の風景を撮り続けてきた人物だ。中でも、嶺岡牧の中に300体以上が確認されている馬頭観音と牛頭観音の姿を丁寧に写真に収めている。

当時、この地の人々と生活をともにした馬や牛を供養して祀ったものだという。後日、鴨川市内のアンティークホテル「ら・みらどーる」で開催された、水田稔写真展「写真映え嶺岡牧」も拝見した。

地域とのさらなる連携を目指して

嶺岡牧は、その名の通り牧場である。そのため、土地としてはもともと現在の千葉県酪農のさとのように、大きな樹木のない丘陵地の草原であった。

それが、戦後に植林事業を行ったことで、嶺岡牧周辺の風景はだいぶ変わったのだが、林業としての需要は活性化されていないのが実状だ。

そうした中、SUBARU里山スタジオの敷地内で伐採された樹木の一部は、近隣の曹洞宗 冨川山 長安寺の建築物を補修するために提供されている。

長安寺と大山文隆住職(筆者撮影)

長安寺の大山文隆住職は、父親の仕事の関係で幼少期から青年期をハワイで過ごし、帰国後は上智大学で学び、祖父の時代から続く長安寺を継いだという国際感覚が豊かな方だ。

地元の細野地区には、長安寺の檀家さんも少なくない。SUBARU里山スタジオは、それまで千葉県が所管し、その後に鴨川市が管理した嶺岡キャンプ場の跡地だ。

その後、地元の細野地区の住民らが、旧嶺岡キャンプ場敷地内にある愛宕神社周辺の整備を自主的に行ってきたという経緯がある。そんな経緯もあり、大山住職は「さまざまな活動を通じて長安寺と地域住民とのつながりをさらに深めていきたい」という想いを持っている。

こうして、SUBARU里山スタジオがある地を俯瞰してみると今後、さまざまなかたちで地域との交流が深まることが期待される。里山を大切にするということは、その地域の方々と気持ちを通じ合わせることだと思う。これからも鴨川周辺での取材を続けていきたい。

著者:桃田 健史