ーーでも、人生に当てはめると、最短経路で行こうとする人が多い。

山田:今の若い人ってすぐに「これをやったらどうなんですか」「どの会社に入ったらいい家に住めますか」って聞いてくるんですよね。働く前から、自分が何を得られるか先に知りたがる。でも僕は、それはなにか違うと思う。

勉強も同じで、むしろ、無目的にやったほうがいいと思うんです。

ーー無目的というのは、いい言葉ですね。僕自身も興味のあることから学び、そこを起点にキャリアを拡張していくことをおすすめしているんです。肩書きが欲しくて学び直している印象の人って多いですけど、でも、学び直しってそういうものではないはずで。

山田:むしろ、「より自分らしくなる」ために学び直すものですからね。「MBAを取って〜」と言ってる人は、おそらくそんなに多くのものを勉強から得ていないんじゃないでしょうか。なるべく効率よく単位取って卒業したとこで、あまり深い学びにはならないと思いますよ。

ーー資格を取るのが目的になってしまい、深く学べなくなると、結果的にキャリアも伸ばせませんよね。

山田:100m走で新記録を出そうとして、100mを走る練習ばっかりやっていたら、絶対にいい記録は出ませんよね。200mや300mを死ぬ気で走る努力をして、初めて100mの記録も出る。仕事も同じなんです。だからこそ、効率よくやろうというのは違うと思います。

不安なのが人間。だからこそ学び続けるべし

ーーとはいえ学部の性質上、「将来の不安を解消したい」「答えが欲しい」と思って入ってくる人も多いはず。そういう学生たちにはどんな態度で接するんでしょうか?

山田:「僕もいまだに不安です」と伝える、ということでしょうか。それが人生だし、不安や悩みがない人がいるんですか、ということなんです。

思えば僕が教授になろうと覚悟を決めたのも、不安からでした。35歳頃、有給休暇を取って、マンションのベランダから外を見ているときに、畑で農家のおばあさんが普通に畑を耕しているのを見て、「あの人にとっては今日株が上がろうと下がろうと関係ないんだよな。なのになんで自分は毎日ストレスを抱えながら仕事してるんだろう?」「俺は何をやってるんだろう」って結構、冷静になったことがあるんです。当時すでに35歳で、そこで結構我に返りました。

ーー考えますよね。この先の仕事人生、今まで来た道をもう1回繰り返すのかって。

山田:それでもう、35から余生を始めようと考えたんです。

でも、実際は余生に移るまでに、10年ぐらいかかりました。簡単にはいかないんです。だからこそ、その期間を、いかに楽しく思って過ごせるかなんだと思います。

私は金融の世界でずっと働いてきて、大学に移ってからも専門はファイナンスですが、自分の中ではそれを「仕事」と割り切っています。その一方で、哲学・文化人類学・生物学・物理学……など、いろいろな分野に興味を持っていて。一見、ファイナンスと関係ないような分野ですが、そういった勉強が、ファンドマネジャー時代も、教授になってからも活きてきました。

自分はよく「keep on……」と学生たちに言うのですが、「……」よりもその前の「keep on」が大切なんだと思います。そういう意味では、これからも学びを「keep on」していきたいですね。(構成:岡本拓)

角田氏と山田氏(撮影:大澤誠)

本連載では社会人になってから、学び直しを経験した方の体験談をお待ちしています。ご応募はこちらのフォームからお願い致します。

著者:角田 陽一郎