岸田文雄首相がキャッチフレーズとして掲げる「新しい資本主義」について、「いったい何を言っているのかわからない」という声が少なくない。

岸田氏は、首相に就任した直後に有識者を集めて「新しい資本主義実現会議」を作った。彼は何もわかっていないけれども「新しい資本主義」と言ってみたかったのだろう、という推測にはリアリティがある。

当面は空っぽの「新しい資本主義」

企業の世界では、能力的な「器」が足りない人物が社長になった場合に、それらしい問題をテーマとした「○○委員会」のような組織(会議をするだけなのだが)をたくさん作るのはよくあることだ。

岸田氏の周辺は(あるいはご本人が)、さすがにこれでは格好が悪いと思ったに違いない。『文藝春秋』の2月号に、「私が目指す『新しい資本主義』のグランドデザイン」という寄稿記事が載った。

同誌のこの種の記事は、本人が話して、文春の記者ないし、ライターが原稿を書いて、本人がチェックする形で作られる。多忙な首相でもあり、今回の記事は、岸田氏の側近が「話す」と「チェック」を主に行ったのではないかと推測するが、最終的に岸田氏が目を通していないということはなさそうだから、岸田首相自身の見解なのだと思っていいだろう。

では、岸田首相が掲げる「新しい資本主義」とはどのようなものなのだろうか。詳しくは『文藝春秋』2022年2月号を見てほしいのだが、岸田氏の大まかな認識は以下のようなものだ。

「資本主義は、市場を通じた効率的な資源配分と、市場の失敗がもたらす外部不経済、たとえば公害問題への対応という、2つの微妙なバランスを常に修正することで、進化を続けてきました。そして、長きにわたり、世界経済の成長の原動力となってきました。20世紀半ばの福祉国家に向けた取り組み、その後の新自由主義の広まりは、いずれも、そうした資本主義の修正、そして資本主義の進化の過程の1つです」と、まず語る。