政策Bについては、次のようなリスクがある。

第1に、人々の行動変容のタイミングが遅れたり、行動変容の程度が不十分だったりする場合には、政策Aと比べてコロナ医療に大きな負荷がかかる可能性がある。

第2に、これまでの政策とは異なるため、その効果には不確実性がある。

第3に自主的な行動変容を促すには、正確な医療データをタイムリーに提供することが重要であるが、それは必ずしも容易ではない。まず、患者の症状が急変することがあること、軽症と中等症の境界が医療現場の判断に委ねられていること、ICU病床が重症者以外の患者にどの程度使われているかの情報がタイムリーに提供されていない等の理由で、「入院必要患者数」を正確に把握すること自体が困難である。

第4に、政策Aと比べると社会経済への負の影響は小さいが、政策Cと比べると大きくなる。リスク回避志向の高い人々は、すでに会食や旅行のキャンセルをして、飲食・宿泊での消費を減らし始めている。

第5に、医療提供体制の負荷が増大した場合、政策Aに比べると「政策決定者に危機感が足りなかった」、「緊急事態宣言の発令が遅すぎた」などの批判が生まれやすい。

大きな感染拡大を許容しても対応できるように

C: (従来の感染症法の枠組みの中で)一時的なコロナ医療体制の変更

政策Cは「大きな感染拡大を許容しても、中等症患者・重症患者・重症化リスクの高い無症状患者や軽症者を診ることができる医療体制に一時的に移行する」というものである。具体的な制度設計は、現場をよく知る医療関係者に委ねたいが、次のような方針が考えられる。

まず、保健所については、濃厚接触者を追跡しない、濃厚接触者に隔離を要請しない。

次に、病院・診療所については、

(1)感染症指定医療機関以外での診療・治療をより積極的に行う(法改正なしで、2類の中での運用方法の変更として)

(2)重症者・中等症2患者のみ入院させることを基本にする

(3)重症化リスクが高い人(高齢者、基礎疾患のある人、肥満の人、ワクチン未接種者)のみに診療を奨励する

(4)重症化リスクが低い人々は症状がなくなるまで自宅療養を奨励するというものである。

神戸大学岩田健太郎教授が提言する「診断は重症化リスクが高い層に特化し、リスクが低い層は診断を目指さない」という方針に近い。一時的な医療体制の変更としておけば、仮にオミクロン株の次の変異株が重症化率・致死率の高いものであれば、元の医療体制に戻すことが可能である。