ドイツと言えば、2011年3月の東日本大震災の東京電力福島第一原子力発電所の事故を受け、欧州連合(EU)で初めて原発ゼロ政策を打ち出した国として知られる。2011年に17基だったドイツの原発は14基が停止され、残る3基も今年末までに停止する見通しだ。

ドイツの再生エネルギーへの転換の本気度は、同国の電力全体に占める原子力発電の割合がこの10年間で22%から11%に低下し、風力や太陽光などの再生可能エネルギーが17%から45%に上昇したことに表れている。環境政策の模範国を自負するドイツは昨年の総選挙で、原発ゼロを推進してきた緑の党がショルツ新連立政権で存在感を示す中、わが世の春を満喫する予定だった。

ところが、ドイツへの風向きが大きく変わりつつある。欧州連合(EU)の執行機関である欧州委員会は1月1日、持続可能な経済活動を分類する制度である「EUタクソノミー」に合致する企業活動を示す補完的な委任規則について、原子力や天然ガスを含める方向で検討を開始したと発表した。

EUタクソノミーは、EUが掲げる2050年までのカーボンニュートラル達成に実質的に貢献する事業や経済活動の基準を明確化するもので、グリーン投資を促進する狙いがある。今月中に新方針は決まる。

COP26開催中に原発新設を表明したフランス

EUタクソノミーにおける原子力や天然ガスの扱いについては、加盟国で意見が分かれている。

実は昨年11月9日、フランスのマクロン大統領は、テレビ演説で数十年ぶりに国内で新規の原子炉建設を再開する考えを明らかにした。第26回国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP26)の閉幕を12日に控えた中での発言は、EU加盟国に強いインパクトを与えた。時はEU議長国を務めるドイツのメルケル政権が終わりを迎え、今年1月からフランスがEU議長国を務めるタイミングを計ったかのような発表だった。

原子力は温室効果ガス排出を最大限抑えた発電手段でフランスのように原子力依存が高い国にとっては、代替可能エネルギーへの移行の時間稼ぎには最も有効といえる。