――東急電鉄は2020年度の定期客減少率が大手私鉄で最大でした。2019年に発表した長期経営構想では沿線人口のピークを2035年としていましたが、コロナ禍で通勤需要が減る中、沿線人口にも影響は出ているでしょうか。

たかはし・かずお/1957年生まれ。1980年一橋大学法学部卒業後、東京急行電鉄(現東急)入社。2011年取締役、2014年常務取締役経営企画室長、2016年専務執行役員などを経て、2018年から現職(撮影:尾形文繁)

鉄道利用者が減っているのは事実だが、沿線人口が減ることはないと思っている。実際、沿線内の住宅需要は非常に旺盛で、逆に流入も起きているのではないかと思う。利用が減った分は沿線から人が離れたということではなくて、やはり働き方の変化などが影響している。

――近年は多摩田園都市など郊外住宅地の高齢化や人口減少が課題になっていました。沿線の住宅需要は旺盛とのことですが、コロナ禍で郊外が注目を集める中、これらの地域の活性化へ「追い風」になっている面はありますか。

追い風というところまでいくかどうかはわからないが、田園都市線の南町田や中央林間などの住宅需要がかなり旺盛という実績は出ている。駅直結でなくても、郊外の駅からバスで少しの距離といったくらいのエリアも需要が生まれている。今後も浸透するかどうかは様子を見ないといけないが、少し前の時期とは変化が起きているのかなと思っている。

沿線域内の移動需要は戻るが

――郊外の需要というと、中心はやはり田園都市線沿線でしょうか。

田園都市線沿線もそうだが、新綱島(2022年度下期開業予定の東急新横浜線の新駅)といった新拠点も非常に好調ぶりを発揮している。働き方とともに住まい方のニーズも変わってきていると思うので、そこは的確に捉えていきたい。東急はコロナ前から(郊外で職住などが近接した)「自律分散型」の街づくりという考え方を持っているが、現在の環境下ではそういった形がより求められるのではないかと思う。

――郊外の人口が安定していても、職住近接が進むと鉄道利用には影響が出るのではないでしょうか。

これまでのように自宅から東急線に乗って渋谷を経て都心に行くというパターンのほかに、都心に行かなくても電車に乗って二子玉川など東急線域内でテレワークといった行動様式もある。利用者数は減ったものの、東急線域内の移動はこれからもう少し増えるだろうと思っている。

ただ、輸送人員は戻っても以前の9割程度だろう。残念ながら現状はそれよりも低い。どのくらい利用が戻るかはもう少し様子を見ないとわからないが、もし今後も低迷が続けば、その需要に対応できるビジネスモデルに変えていかなければならない。