中国の株式市場で、半導体関連企業のIPO(新規株式公開)の「不敗神話」が崩れつつある。1月14日、半導体設計会社の翺捷科技(ASR)が上海証券取引所のハイテク企業向け新市場「科創板」に上場したが、取引開始直後から株価が暴落。14日の終値は109元(約1955円)と、売り出し価格の164.54元(約2952円)から33.75%も下落した。

翺捷科技は2015年に創業し、スマートフォンなどの無線通信端末で信号の変調・復調を制御する「ベースバンドチップ」の開発を手がけている。創業者の戴保家氏は、2004年に別の半導体設計会社の鋭迪科微電子を設立し、アメリカのナスダックに上場させた実績を持つ。その後、鋭迪科微電子は2013年に国有半導体大手の紫光集団に買収された。

紫光集団は同じく2013年に別の半導体設計会社の展訊通信を買収。その後、鋭迪科微電子と合併させて2018年に紫光展鋭科技を設立した。ところが経営の主導権などをめぐって揉め事が絶えず、鋭迪科微電子出身のエンジニアが多数離職した。そんななか、合併にもともと反対していた戴氏が独立して立ち上げたのが翺捷科技だった。

大手3社が市場シェアの8割握る

現時点では、翺捷科技の経営はまだ黒字化していない。IPOの目論見書によれば、2021年1月から9月までの業績は売上高が14億3300万元(約257億円)、純損失が4億8400万元(約87億円)だった。

主力製品であるベースバンドチップの売上高は、2021年1〜6月期の総売上高の79.45%を占めた。赤字の理由について翺捷科技は、「移動体通信は多額の研究開発投資を要する分野であり、技術の蓄積と新製品開発への先行投資が必須であるため」だと説明している。

見方を変えれば、翺捷科技の株価が上場直後に暴落したのは、赤字からの早期脱却を投資家の多くが疑問視している表れと言えそうだ。ベースバンドチップの市場は過去の熾烈な競争を経て淘汰が進み、すでに少数の有力企業による寡占状態になっているからだ。

本記事は「財新」の提供記事です

市場調査会社のストラテジー・アナリティクスのデータによれば、ベースバンドチップの2020年の世界シェアは首位のアメリカのクアルコムが43%、第2位と第3位は台湾の聯発科技(メディアテック)と中国の海思半導体(ハイシリコン)がそれぞれ18%であり、上位3社で市場全体の約8割を握っている。後発の翺捷科技が、そこからシェアを奪い取るのは容易なことではない。

(財新記者:翟少輝)
※原文の配信は1月14日

著者:財新 Biz&Tech