企業規模別に大きな賃金格差がある。これは、小規模零細企業では労働組合の力が弱いからだと言われることが多い。しかし、労働分配率は、大企業のほうが低い。企業規模別の賃金格差は、生産性の差による。それは、資本装備率の差による。

昨今の経済現象を鮮やかに斬り、矛盾を指摘し、人々が信じて疑わない「通説」を粉砕する──。野口悠紀雄氏による連載第68回。

給与は、業種別・企業規模別に大きな差

賃金はさまざまな要因に依存する。まず、年齢、性別、学歴などの要因がある。

これに加え、企業規模と業種による違いがある。ここではこの問題について考える。

国税庁民間給与実態統計調査によると、民間企業の業種別・資本金規模別の平均給与は、図表1のとおりだ(原表に記載されている業種のいくつかを、省略して示してある)。

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平均は、年額389万円だ(個人企業と「その他の法人」を含む全体の平均は、370万円。図表1には、法人企業のみを示してある。なお、給与とは、給料・手当及び賞与の合計額)。

まず、企業規模別に明らかな差が見られる。

資本金10億円以上の平均給与534万円は、資本金2000万円未満の314万円の1.7倍だ。

業種別にも大きな差がある。最も高い電気・ガス・熱供給・水道業の763万円は、最も低い宿泊業,飲食サービス業164万円の4.6倍だ。

高給与業種は、金融業,保険業、電気・ガス・熱供給・水道業、情報通信業だ。低給与業種は、対人サービス業だ。

平均給与が最も高い電気・ガス・熱供給・水道業の資本金10億円以上の年収815万円は、最も低い宿泊業,飲食サービス業の資本金2000万円未満の159万円の5.13倍にもなる。

規模別に差が生じる要因としてしばしば指摘されるのは、労働分配率の違いだ。ここで分配率とは、付加価値(売上高ー原価)のうち、賃金・報酬が占める比率のことだ)。