新年度、新学期がスタートし、心機一転して、さまざまなことを「改めてきちんと学びたい」と考えている人も多いだろう。

政治・経済・社会・法などをどのように学んでいったらいいか。そのヒントとなるロングセラーとなるのが、改訂第二版がでたばかりの『〈学問〉の取扱説明書』。現代思想の紹介や丁寧なテクスト分析でも定評のある仲正昌樹氏が、大学4年生(♂)と博士課程に在籍する自称“高学歴ワーキングプア”(♀)の質問に答える問答形式で、学問の基本やそのツボを伝授する。

最近、復活しつつあるマルクスの思想とは何か? そしてどう格差社会と関連するのか? をマル経(もはや死語!?)のキーワード「労働価値説」を導きの糸として、考えてみよう。

格差問題と労働価値説

:なるほど。唯物論的な言い方に徹すると、じつはマルクス主義系サヨクの理想がものすごく元も子もないことになることだけはわかりました。サヨクの人たちも、究極の唯物論がどういうものになるのか、それほど突き詰めて考えていないんじゃないですかね。格差社会からかなりズレてきたので戻りたいんですが、「労働価値説」と格差って、マルクス主義の中ではどう繫がっているんですか?

仲正昌樹(以下、仲正):「労働価値説」が、労働者の肉体労働をとおしてのみ価値が生み出されることを主張する説だとすると、資本家が利益を得ようとすれば、やることは1つしかありません。労働者を搾取して、彼らが生み出した価値の一部をかすめ取ることです。では、利益率を上げようとすれば、どうしたらいいでしょうか?

:搾取率を上げる?

仲正:搾取率を上げようとすれば、労働時間を延ばすか、労働時間当たりの賃金を下げるしかない。多少は技術革新による生産性の向上も図るけれど、基本的に商品の価値はそれに投下された労働力によって決まるので、労働者に対する搾取を強化せざるをえません。そのせいで資本主義的生産力が増大すればするほど、労働者はますます困窮化していきます。

それと同時に、そうやって労働者を搾取して作った製品を市場で売り切らなければ、利益は上がりません。労働者は消費者でもあります。当然、労働者たちは搾取されて購買力が落ちているので、たくさん作っても、売れる量には限度があります。そうすると、たくさん作ってしまった製品を売るために、資本家同士で競争が起こります。競争して負けた資本家は資産をなくして、労働者に転落し、搾取の対象になります。