ルーベンシュタイン:スティーブの健康状態は、これ以上CEOは続けられないほど悪化していました。彼が取締役会にそう告げると、2011年8月には、あなたがCEOに着任すると発表されましたね。あなたがCEOになったとき、スティーブは『私がやりたいと思っていたのはこういうことで、この目標を達成してほしい』と言ってくるだろうと思っていましたか? あるいは自分が何をすべきか、自分なりの見解を持っていましたか? このふたつのバランスをどう取りましたか? 何しろあなたは、伝説的人物の後を引き継いでいたわけですからね。

クック:物事はそんなふうに、ひとつひとつ順序だててやって来るわけではありません。アップルはとてもオープンな会社です。相手の意見に反対だったとしても、誰もが途中で遮らず、最後まで話を聞こうとします。たとえスティーブが腹の内に抱えていた秘密の考えがあったとしても、私は気にしませんでした。彼はいつも自分の考えは包み隠さず話してくれましたから。そのときの私には、彼が会長に収まり、永遠に会社を担ってくれるのだと思い込んでいました。私たちの関係は変わらずに続いていくのだと。しかし残念ながら、そうはいきませんでした。

iPhoneは世界を一変させるほどの力が備わっていた

ルーベンシュタイン:あなたがたは、人類の歴史のなかで最も成功した消費者製品をお持ちです。すなわちiPhoneですね。

クック:iPhoneは非常によく考え抜かれた奥深い製品で、世界を一変させるほどの力が備わっているという実感がありました。当時、スティーブが行ったプレゼンテーションをもう一度見てもらえば、製品は言うまでもなく、その説明の仕方にも、彼がiPhoneに注ぎ込んだ大いなる情熱が実感できるでしょう。私には、まるで昨日のことのように思い出されます。

ルーベンシュタイン:これまで何台くらい売れましたか?

クック:優に10億台は超えています。