無論、初回投票で極右や極左の候補に投票した有権者の多くは極右や極左思想の持ち主ではない。国民生活の改善に焦点を当てたルペン候補やメランション候補の公約が低所得者層の支持を集めたのだ。マクロン大統領の2期目の政権運営は、こうした現状に不満を持つ有権者からの抵抗が予想され、改革の推進力は停滞しよう。

2期目の政権運営を占ううえで注目されるのが、6月12日(初回投票)と19日(決選投票)の国民議会(下院)選挙の行方だ。前回の選挙では、大統領選でのマクロン氏の勝利を受け、同氏が旗揚げしたばかりの中道政党・共和国前進が過半数の議席を獲得し、その後の政権運営の基盤を築くことに成功した。

「共和国前進」の議会過半数獲得に不安も

だが、選挙基盤が弱い共和国前進はその後の地方選挙で苦戦が続き、昨年の地域圏議会選挙では8.8%の支持しか集めることができなかった。国民議会選挙は一般に大統領選の結果に大きく左右される。そのため、大統領選の結果が判明するまでは、投票を占う世論調査は発表されない。今回のマクロン大統領の勝利を受け、フランス国民が大統領の公約実現に向けて共和国前進に投票するのか、公約阻止に向けて他党に投票するのかは流動的だ。

フランスでは大統領が主に外交を、首相が内政を担う双頭体制で国政を運営する。大統領は首相の任命権を持つが、国民議会が首相の不信任を決めることができるため、議会の多数派が支持する首相を任命する必要がある。議会優位の前体制(第四共和政)の下で統治能力が失われたとの反省から、フランスの大統領は強い権限を持つが、マクロン大統領が改革を実行するには、議会基盤を確保することがやはり不可欠だ。

第五共和制のフランスでは、大統領の出身政党と議会の多数派が食い違う“ねじれ(コアビタシオン)”が発生したことが過去3回あり、大統領は政策の軌道修正を余儀なくされた。かつては大統領と議会の任期が異なり、選挙のタイミングがずれていたことでねじれが発生しやすかったが、2002年以降は大統領と議会の任期が統一され、大統領選直後に議会選挙を行うことでねじれは発生しにくくなった。ただ、共和国前進の選挙基盤の弱さ、マクロン大統領の政策訴求力の弱さを考えると、6月の国民議会選挙で共和国前進が過半数の議席を獲得できるかは不安が残る。