私たちが主張する「サステナビリティ経営」は、成長自体を否定しているわけではない。「地球の復元力の範囲内」という制限のもと「適切な成長」を目指しており、これまでのような「無限成長」は選択肢としてあり得ない。

では「適切な成長」とは何だろうか。

世界では収入と幸福の関係についての研究がいくつか行われている。2018年に発表された研究(※)によると、年収650万〜800万円の場合には、収入と幸福度の間に相関が見られるが、年収が800万円以上になると相関が見られなくなる。

※Andrew, T.J., Louis, T., Ed, D., and Shigehiro, O., 2018. Happiness, income satiation and turning points around the world, NATURE HUMAN BEHAVIOR, January 2018 Vol2. pp. 33-38.

ここから読み取れるのは、人々は一定の物質的豊かさに達したのちには、「精神的豊かさ」を求めるようになる、ということだが、それは裏返してみると、そうはいっても一定水準の物質的・金銭的豊かさが、多くの人の幸福の基本にあるということだ。

サステナビリティ経営は物質的成長を否定してはいない

もちろん、幸せはきわめて個人的な感覚なので、完全に一般化することはできない。発展途上国で貧しい暮らしをしていても、先進国で物質的に満たされた生活をしている人より大きな幸福を感じる人もいるだろう。

しかし、明日の食べ物や住まいを心配する状況で、「幸せ」を感じることは多くの人にとって難しい。基本的な衣食住が足りていて、尊厳ある暮らしが送れることが、「幸せ」にとって重要だ。

一定レベルの物質的豊かさを世界中の人々にあまねく提供することは、資本主義とテクノロジーを原動力にした物質的成長なしに実現できない。その意味で、サステナビリティ経営は、物質的成長を否定してはいない。ただし、その場合の「物質的成長」は、親亀を毀損しないことが大前提だ。

では、サステナビリティ経営と資本主義との関係はどうだろうか?