そのような中、シンガポール紙「聨合早報」に、旧知の台湾問題研究者である陳鴻斌・元上海国際問題研究院主任研究員の「アメリカ軍の最新表明は台湾情勢に影響する」と題する評論が掲載された。「アメリカ軍の最新表明」とは、オースチン国防長官とアメリカ軍制服トップのマーク・ミリー統合参謀本部議長が2022年4月7日、2023年国防権限法案(国防予算)に関する上院軍事委員会の公聴会に出席し、ウクライナ情勢と台湾問題について証言した内容を指す。

3時間以上に及ぶ公聴会の大半がウクライナ情勢に費やされたのは当然だが、終了間際、トランプ前大統領の核心的支持者であるジョシュ・ホーリー共和党議員(ミズーリ州選出)の質問に、ミリーは次のように証言した。

ウクライナ「代理戦争」からの教訓

「最善の台湾防衛は、台湾人自身が行うことだ。例えばウクライナでしているようにわれわれは台湾を助けられる。ウクライナから本当に多くの教訓を得た。これらは中国が極めて深刻に受け止めている教訓でもある。(台湾本島を攻略するには)台湾海峡を横断し、広い山岳地帯で水陸両用作戦や、数百万人が住む台北市を空爆することになる。台湾は防衛可能な島だ。中国に対する最善の方法は、接近拒否抑止力を通じて、台湾攻撃が「非常に、非常に達成困難な目標」であることを、彼ら(中国側)に思い知らせることだ」

これが台湾有事に関するミリー証言の全文だ。この証言は一部の香港、台湾紙が伝えているが、日本ではほとんど報じられていない。ミリー証言を改めてかみ砕いて紹介すると、①台湾は防衛可能な島。中国軍による台湾本島攻撃・攻略は極めて難しい。②最善の防衛は台湾人自身が行うこと。アメリカはウクライナでしているように台湾を助けられる。

まず①は、ロシア軍は平原の多いウクライナですら苦戦しているのに、中国軍が台湾本島を攻略するには、約200キロの幅がある台湾海峡を渡海し、山岳地帯の多い本島で水陸両用作戦を行い、人口密集地空爆という困難さを指摘する。確かに、地続きのウクライナと比べ、台湾本島攻略の難度は極めて高い。

一方、②の「代理戦争」について、ミリーは詳細を明らかにしていない。ただ、①、②の文脈から判断すれば、少なくともアメリカ軍内部では、台湾有事でもアメリカ軍が直接派兵せず「代理戦争」が可能かどうかの検討をしていると考えていい。

もちろん最終決定ではないし、ホワイトハウスや国務省、議会の意向も明確ではない。ただロシア苦戦が伝えられるウクライナ戦争が、台湾問題に与えた「教訓」の一つが「代理戦争」だ。台湾はアメリカの同盟国ではないし、中国も核保有国という2条件は、ウクライナと重なる。