まず、外苑にある国立競技場の敷地が現在の国際大会を開催するには手狭になったことを踏まえて、メモリアルスタジアムとして規模を縮小して整備する。さらに、聖徳記念絵画館前の草野球場は閉鎖して、元の芝生公園にすることで創建当時の姿に戻す。暗渠となった渋谷川を復活・再生させる。

明治神宮は、外苑にある明治記念館やスポーツ施設などで得た収益を、内苑・外苑の維持管理費用に充てている。そこで、老朽化した明治神宮球場を現在の第2球場の位置にズラして建て替えし、テニス場などの関連スポーツ施設は今の神宮球場の跡地などに整備する、ともある。

都市計画公園内には宿泊施設の建設が認められているため、新たにレジデンシャルホテルや高齢者向けケアホテルを建設することで、将来の収益確保を図れるようにもしている。

緑のネットワークシステムを整備

注目すべきは、この再整備が神宮外苑だけにとどまらず、東京都心部の公園・緑地を連携して整備する「東京セントラル・パークシステム構想」を盛り込んでいたことだ。

パークシステムとは、1800年代半ばにアメリカで誕生した公園整備の考え方で、公園単体で考えるのではなく、複数の公園を豊かな大並木道や街路樹 でつないで「緑のネットワーク」システムとして整備する考え方である。

東京のヒートアイランド現象対策には「風の道」の確保が必要と言われる。東京湾から吹き込む風を通りやすくするため、川の上に建設された高速道路の撤去や暗渠となった川の復活とともに、公園や緑のネットワークも重要な役割を果たす。

報告書では、パークシステム整備の一環として、内苑と外苑を結ぶ「裏参道」を再整備するほか、新宿御苑、青山墓地、代々木公園などを緑のネットワークでつないで快適な都市環境を構築することも提案していた。現在進んでいる再開発計画とは異なり、公園・緑地の重要性を強く意識したものだ。

もっとも、この再整備案は“幻”となってしまった。ラグビーワールドカップの開催に伴い、国立競技場を建て替えて、神宮外苑には似つかわしくない巨大施設とする計画が動き出したからだ。それによって都市計画公園として設定されていた同エリアの建築高さ制限が大幅に緩和され、超高層ビルなどの建設も可能になった。

明治神宮はもともと国立競技場の建て替えまでは想定していなかったのではないか。東京都もまたしかりだ。2002年のサッカーワールドカップでは、横浜国際総合競技場(日産スタジアム)や埼玉スタジアムがメーン会場として建設され、国立競技場の建て替えは行われなかった。2006年、東京都が2016年のオリンピック開催にあたって立候補し、2007年に基本計画を発表した際も、メーンスタジアムは晴海地区に移転する計画で、国立競技場を建て替える計画はなかったからだ。

国立競技場の建て替えが本格的に動き出したのは、2009年7月にラグビーワールドカップ2019の日本開催が決定し、同年10月に2016東京五輪の落選が決まってからである。