ただ、こうして進む再開発計画に対して市民からは疑問の声が上がっている。「神宮外苑の再開発について公的な場で一切議論がされないまま、東京都は事業者側の計画案をそのまま受け入れている」ーー。4月に開催された市民グループによる説明会では、こんな指摘もあった。

過去には、日本学術会議が2015年に行った「神宮外苑の環境と新国立競技場の調和と向上に関する提言」で、将来ヴィジョン策定委員会の設置を求めていた。しかし、その後も計画作成は事業者だけで進められ、三井不動産、明治神宮、日本スポーツ振興センター、伊藤忠商事が「東京都公園まちづくり制度実施要綱に基づく説明会」を近隣住民のみを対象にようやく実施したのは、2020年1月になってからだ。

そして、コロナによる東京五輪の延期も影響し、神宮外苑の都市計画案に関する説明会が開催されたのは2022年2月のことだ。3月には都市計画決定が告示された。5月19日には、4者連名のプレスリリースを神宮外苑地区のまちづくりに関する専用ホームページがで公開し、2024年新築着工、2036年の全体竣工に向けて再開発に着手することを正式に発表した。

前述のように、神宮外苑の土地の大半は明治神宮が所有・管理しており、税金が投入されているわけではない。しかし、事業者たちで進められていく再開発に、市民は置いてきぼりの感が拭えない。

かつて、神宮球場の建設費が不足した時には六大学の野球関係者が資金を集め、大学野球の聖地を作り上げたように、神宮外苑が多くの市民によって支えられてきたのは歴史的な事実である。

プレスリリースでは、「スポーツを核とした神宮外苑地区の新たな100年に向け、誰もが気軽に訪れ楽しむことができる公園の再編と、広域避難場所としての防災性を高める複合型の公園まちづくり」をビジョンとして掲げ、「各関係機関等との協議を進めながら、 今後、具体的な整備計画を検討いたします」と表明している。

重要な社会インフラである大規模な公園・緑地をまちづくりにどう活かしていくべきか、再検討していく余地がありそうだ。

※神宮外苑“幻”の再整備計画のキーマン、簔茂壽太郎氏のインタビューは後日配信予定です。

著者:千葉 利宏