副社長職復活が意味するもの

トヨタはこの4月1日付で、章男氏が一度廃止した副社長職を復活させた。11人の執行役員のうち、財務担当の近健太氏、技術担当の前田昌彦氏、人事担当の桑田正規氏の3人を副社長に引き上げた。

写真左より、近健太副社長、前田昌彦副社長、桑田正規副社長(写真:トヨタ公式サイトより)

元副社長で、「番頭」の重鎮・小林耕士氏は、6月の株主総会後に顧問に退く。すべては、「ポスト章男」の動きといえよう。

振り返ってみれば、章男氏は2009年、リーマン・ショックにより大赤字を背負ったトヨタの新社長についた。リコール問題に端を発するアメリカ公聴会、東日本大震災など難局に対処する一方、経営の構造改革を進めた。それは、10年がかりの取り組みだった。世界で37万人を擁する巨大企業トヨタの舵取りを行い、想像を絶する重圧と孤独に向き合ってきた。

「私が社長になったとき、大赤字はもとより、企業風土も壊れてしまっていました。土地を耕すところから始めざるをえなかった。いい土にするための抜本的な構造改革から取り組んだわけです。自分が渡すときには、耕すこともあるだろうけれども、刈り取りも残してあげる。そういうところでバトンを渡したいと思っています」

章男氏は折に触れて、このように「ポスト章男」について語ってきた。

2020年4月、役員体制を変更し、副社長職を廃止して、執行役員に一本化した際も、こう語っている。

「副社長という階層をなくしたのは、次の世代にタスキをつなぐためです。そのためには、私自身が次世代のリーダーたちと直接会話をし、一緒に悩む時間を増やさなければならない」

そして、「ポスト章男」の動きは具体化していく。たとえば、若手の「ポスト章男」有望株50人ほどについて、絞り込みが始まったのが、それだ。

章男氏は、次のようにも述べてきた。

「今のトヨタにおいて、責任者は、私ひとりです。執行役員は、今のトップを支える経営陣であるとともに、次のトップの候補生でもあると考えております。そのためには、1つの機能ではなく、2つ以上の責任範囲を持ち、より大きな視点で会社を見るトレーニングをし、トップの役割である『責任をとること』『決断をすること』ができるようにならなければならない」