章男氏は、いわば肩書をなくしてフラット化した執行役員の中で、次世代幹部を養成し、自らの後継を見極めていこうと考えていたに違いない。

“社長の心得”や“社長の作法”にいたるまで、手をとり、足をとるようにして、厳しく鍛えてきたといわれる。それは、記者会見での喋り方、振る舞いにまで及ぶという。

つまり、経営者目線で会社全体を見て動く具体的トレーニングをし、トップの役割、責任、決断のあり方を教えているのだ。

早ければ3年後に迫る社長交代、そのときトヨタは?

常識的にいえば、決算会見に出席した2人の副社長が“ポスト章男”と思われる。とりあえず、この厳しい経営環境の中で、どこまで対応できるのか、実力が試されるわけだ。

11日の会見の質疑応答は、まるで“ポスト章男”の前哨戦のようだった。

長田氏が采配をふり、副社長らにテンポよく回答を促した。章男氏の「あ」の字も出なかったのは、事前の打ち合わせがあってのことなのか、はたまたトヨタの次代を背負う若手の「覚悟」のあらわれなのか……。

会見では、「ポスト章男」を担っていく、強い“意志”が感じられた。

社長交代は、早くて3年後だろう。3年後であれば、章男氏は69歳になる。

社長交代後、章男氏は会長に就くのは間違いない。どんな会長になるのか。

「見事な会長になってもらわなくてはならない」と、番頭・小林氏は語っている。

そして、バトンタッチのとき、トヨタはどんな会社になっているのか。「自動車産業の100年に1度の大変革期」において、章男氏がかねて主張している「自動車メーカーからモビリティカンパニーへの転換」は完遂しているのか。

いましばらく、章男氏は、まだまだやらなければならないことが多い。

著者:片山 修