ただ、スウェーデン当局がYPGの政治部門であるクルド民主統一党(PYD)の代表と接触しているとトルコは指摘し、2021年にスウェーデン首相になったアンデション氏の当選にクルド系国会議員の支援が欠かせなかったことを挙げている。アンデション氏の社会民主労働党とPYDは密接な関係にあるとトルコ当局は見ている。

さらにシリア北部のクルド人支配勢力の政治部門、シリア民主評議会(SDC)ともスウェーデンは協力関係にあるとしている。

エルドアン氏は、スウェーデンとフィンランドのNATO加盟条件として、PKKとその関連組織に対する公の非難声明を要求している。さらにトルコ政府は、スウェーデンとフィンランドで活動するPKK協力者を取り締まることを望んでいる。

トルコのチャブシオール外相は5月25日のフィンランドとスウェーデンの外相との協議後、「テロリストのリストが提示されなかった」と不満を表明した。ただ、トルコが北欧2カ国のNATO加盟批判で、クルド勢力攻撃を正当化しているとの批判もある。

ウクライナ危機でトルコは無視できない存在

北欧2カ国のNATO加盟には、アメリカ、およびイギリス、フランス、ドイツの後押しなどが不可欠と見られる。スウェーデンのアンデション政権は、トルコが要求するテロリスト引き渡しや対トルコ武器禁輸措置の解除に応じる構えは見せていない。

イギリスメディアはNATO加盟承認の全会一致のルールに疑問を投げかけており、いずれにせよ北欧2カ国のNATO加盟は対ロシア外交で対立関係を鮮明にしている。

NATOのストルテンベルグ事務総長は5月24日、スイス・ダボスの世界経済フォーラム(通称、ダボス会議)で「経済利益より自由を優先する戦いだ」と述べ、ロシアや中国と価値観において決定的対立をもたらす発言を行った。

EUは6月末、ウクライナ危機を受け、不安定化が避けられない欧州の新たな安全保障戦略を話し合う首脳会議を予定している。それまでにはトルコの支持を得るため、協議が続きそうだ。

トルコはウクライナ危機でロシアとウクライナの仲裁役を買って出ており、無視できない存在だ。北欧2カ国の加盟問題はNATOおよび欧州安全保障にとって大きなターニングポイントになるだろう。

著者:安部 雅延