5月中旬にアメリカのバイデン大統領が日韓両国を訪問したことは、国際社会の関心がウクライナ戦争によって欧州外交に集中する中で、久しぶりに世界の目をアジア地域に向けさせることとなった。同時に、ウクライナ戦争で生じた東アジア地域のパワーゲームの空白という好機に影響力を増そうとしていた中国の動きを、牽制するという狙いも一定の成果をあげた。

冷戦後しばらく、東アジア地域ではアメリカの軍事力や経済力が圧倒的な力を持ち、アメリカ中心に各国間で同盟関係が結ばれ、比較的安定した秩序が構築された。しかし、2010年代に入ると、「世界の警察官」の役割を放棄したアメリカの衰退が顕在化した一方で、大国化への野心をあらわにした中国が急速に台頭し、米中対立が前面に出てきた。

バイデン大統領は「民主主義対専制主義との戦い」を掲げ、民主主義国家の結束を訴えている。しかし、現実の国際社会はそんな単純な構図にはなっていない。アジア地域においても、中小国は米中対立の狭間で巧みに生き残ろうとしており、アメリカが物言えば各国がついていくような時代はすでに終わっている。

新たな多国間グループの形成が始まった

そんな状況の変化を受けて、バイデン大統領の訪日で、日米が中国に対抗するために加速させたのが、多様で重層的な国家グループの形成という新たな地域秩序の構築だった。

バイデン大統領は日本訪問の前に韓国を訪れ尹錫悦(ユン・ソンニョル)新大統領と会談して、文在寅(ムン・ジェイン)前大統領時代に崩壊しかかっていた「日米韓」3カ国の連携強化を確認した。日本では、13カ国が参加するインド太平洋経済枠組み(IPEF)の立ち上げを表明するとともに、日米豪印4カ国の首脳会談(QUAD)を開き、今後も定期的に開催することで合意した。

このほかにもバイデン大統領は外遊出発直前にASEAN(東南アジア諸国連合)首脳をワシントンに集め、特別首脳会合を開いている。昨年秋には米英豪3カ国の軍事同盟であるAUKUSを結成している。