脱線した車両は5月31日頃に脱線した場所から移動したが、今度は脱線した車両が壊してしまった線路や信号機を直す必要がある。脱線した場所はポイント(分岐器)と呼ばれる線路の切換箇所で、脱線した車両がポイントを壊しているために、損傷したレールに補修をかけ、入換用の信号機を直し、ポイントの機器を交換しなければならない。この作業が完了して、閉じ込められていた車両をようやく取り出すことができる。

復旧作業により、6月1日からは特急「こうや」「りんかん」の運転が再開された。といっても、すべての列車ではなく、平日は「りんかん」2往復、土休日は「こうや」2往復と「りんかん」3往復が運休、代わって自由席の特急を設定して運行を継続している。また、平日では朝のラッシュ時間帯で8両編成の特急が運転されているが、これは4両編成に短縮して運転される。

予備の車両がない

脱線で損傷した車両は1編成だけなのだが、1編成を失っただけで長期にわたってイレギュラーな対応を行う事態を招いているのは、南海が抱える特急車両の特別な事情がある。

特急「こうや」「りんかん」といった南海高野線の特急を運行するには、3編成の特急車両が必要となる。ところが、「こうや」「りんかん」を担当する特急車両は3編成しかない。つまり、予備の車両がまったくない状態で運行されているのだ。

今回、脱線で1編成を失った形となり、残りの2編成で運行を確保、2編成でカバーできない分、つまり3編成目の運用に相当する部分が一般の車両によって運行されるというわけだ。

6月15日は特急車両の検査のために1編成のみの運行となり、一般の車両によって運行される列車が増える。特急車両が脱線する以前の普段の状態でも、検査の際は2編成での運行になってしまうが、見た目上は3編成で運行できるカラクリがある。それは3編成目のやり繰りを見ればわかる話で、3編成目は朝の8両編成の列車で使用した後、夜までは出番がない。出番のない、日中に検査を済ませてしまうわけだ。検査は平日にまとめて済ませてしまい、土休日は3編成ともフルに使用している姿が見て取れる。