米中の対立が激しくなる中、台湾問題がますます前面に出てきている。中国は台湾周辺での中国人民解放軍の空軍と海軍の活動をかつてないほど活発化させ、台湾有事が現実味を増してきている。

台湾と沖縄の与那国島はわずか110キロという近さだ。そして、台湾は、九州からフィリピンに至り、米中対立の最前線ともなっている「第一列島線」の中心に位置する戦略的要衝だ。台湾有事は日本にとっては他人事ではない。

ウクライナの次は台湾なのか。その時、日本は大丈夫なのか。そこで、外務省安全保障政策室長など一貫して安全保障の実務を担当し、この分野で日本を代表する専門家である森本敏元防衛大臣に話を聞いた。

森本氏は「日米台の政府担当者が非常事態にどのような協力ができるのか今まで協議したことがないのが一番の問題」と指摘。さらに、台湾有事の際に、台湾にいる邦人や、先島諸島にいる日本人約10万人を九州などに緊急避難させるための海上輸送力や海上警備能力が「日本にはほとんどない」ことを憂慮する。

中国が決心するには3つのファクターがある

――ロシアのウクライナ侵攻は、中国の台湾侵攻の可能性とよく比較されます。今年1月末に出版された御著書『台湾有事のシナリオ』(ミネルヴァ書房)では「中国が2035年頃を目標に、核心的利益の目標である台湾を統一しようとしていることは、一連の行動を見れば明瞭である」と書かれています。ウクライナ戦争を踏まえ、その見通しに変化はありますか。

中国共産党が台湾を統一しようとする意思はまったく変化していない。習近平国家主席が昨年10月に「台湾統一という中国共産党の歴史的任務は必ず実現しなければならないし、必ず実現できる」と言った通りだと思う。だが、いつどのようなシナリオで台湾を統一するかについては、中国はまだ決心していない。

これを決心する時に、中国が念頭に入れる3つの大きなファクターがある。第一に、その時アメリカはどのような決断をして介入してくるか。第二に、その時の米中の軍事バランスはどのようになっているのか。第三に、そのことが中国の内政に与える影響の重要度を中国共産党指導部がどう考えるか