参院選の投開票(7月10日の見通し)が迫ってきた。日米首脳会談などの外交日程をこなした岸田文雄内閣の支持率は堅調で、野党が勢いを欠いているため、自民党の優勢が伝えられている。だが、ウクライナ戦争による資源高や急激な円安で物価が急騰。年金の減額など国民生活の困窮も広がる。岸田自民党の足元は、盤石とはいえない。その死角を探ってみよう。

防衛費増額を主導しようともくろむ安倍元首相

「新時代リアリズム外交」を掲げる岸田首相は5月下旬、バイデン・アメリカ大統領を迎えた日米首脳会談で防衛費の「相当な増額」を約束。インド、オーストラリアを加えた「クアッド」の4首脳会談でも中国の海洋進出を牽制するなど、日本外交の存在感を示した。

防衛費は現在、約5.4兆円で国民総生産(GDP)比は1%程度。自民党内では、5年以内に北大西洋条約機構(NATO)並みの2%程度に引き上げるべきだという意見が強まっている。そのためには毎年1兆円ほどの増額が必要になる。これに対して、野党の立憲民主党や共産党は「防衛費の中身の議論がないまま増額が優先されている」と強く反発している。

財政状況が厳しい中、防衛費増額分の財源の確保も難しい。①国債増発、②社会保障などの経費削減、③増税、といった選択肢が考えられるが、いずれも容易には受け入れられそうにない。

安倍晋三元首相は、来年度の防衛費について「6兆円後半から7兆円が見えるくらいの増額」を提案。この問題を主導しようと狙っている。安倍氏はさらに、ウクライナ戦争でロシアのプーチン大統領が核兵器の使用を示唆したことに関連して、日本にアメリカの核兵器を置く「核共有」についても議論すべきだと主張。岸田首相は「非核三原則を遵守し、核共有は議論しない」と明確に否定した。

防衛費や核共有をめぐる議論は、参院選で大きな争点となることは必至だ。岸田首相は野党からの批判にさらされる一方で、安倍氏らの主張も無視できず、板挟みになる可能性がある。