今回の選手権の参加者は「故障した列車の車掌」の設定。後続列車をうまく誘導して連結、「重連推進運転」をさせる想定の競技をする。はじめに列車の乗務員室に乗り込み、運転士の横で連結場所の50m手前まで「乗車誘導」。次に外へ出て、前方の線路脇から旗を用いて「徒歩誘導」し、5m手前でいったん停止させる。そこから「僅少の来れ」で慎重に誘導、連結をする位置で停止させる。本来ならここで終了だが、選手権ではその後に反対方向へ5m列車を動かす「僅少の去れ」と停止の合図も競技に加えた。

停車位置の点数を決める線路脇の色分けしたホース(記者撮影)

列車の位置の基準となるフックを示す運転車両部の松村信輝さん(記者撮影)

5m手前と連結位置に青、黄、赤で色分けしたゴムホースを線路脇に置いて採点した。1000形の先頭にあるヘッドマーク用のフックがどの色の場所に来ているかで点数に差をつける。いずれもバックさせない限りやり直しができるが、やり直したがために行き過ぎてしまうおそれもあるので、手前で停まった場合の判断は選手次第だ。

それぞれ誘導する前の運転士との「打ち合わせ」も採点される。「距離・目標・対象物となる目安を伝えているか」「誘導方法は何か」「自身の掲出場所は停止位置から見てどの地点か」など、運転士との相互確認が確実にできているかを重視した。誘導中、車掌は旗の合図とともに「チョイ前、チョイ前」「停止」などと声を出していく。

各車掌区から24人が参加

小田急には運転士が所属する電車区と、車掌が属する車掌区が、それぞれ喜多見、大野、海老名、足柄の4カ所にある。選手権には各車掌区から6人が参加して、計24人が腕を競った。見学者は2日間で延べ130人を上回ったという。

電車を動かすのは海老名電車区の運転士。選手ごとに差が出ないよう、基本的に1人で担当した。使用車両が赤い1000形となったのは、4両でたまたま予備車だったという運用上の都合のほか、とくに理由はなかったようだ。

喜多見車掌区からロマンスカーの乗務員制服で参加した石川健太郎さんは、3月11日の50000形(VSE)の定期運行最終日に乗務した経験の持ち主。選手権には「異常時の実践はなかなかできないので感覚を養いたいと立候補した」という。競技後は「1000形はブレーキがかかり始めるのに時間がかかるため早めに停止合図を出すように工夫した。自分の想定よりは手前に停まったので、そこから微調整することにした」と振り返った。