欧州中央銀行(ECB)は2008年以降、物価安定の諸条件について高い代償を払って重要な教訓を学んできた。物価の安定には金融の安定と脱炭素の加速の2つが極めて重要、という教訓だ。記録的なインフレに立ち向かうユーロ圏の政策当局は、こうした教訓を忘れるべきではない。

欧州における物価高騰の最大の要因は、エネルギー価格の上昇だ。さらに食品価格の騰勢も、不作、戦争、新型コロナ禍に起因するサプライチェーンの混乱に続くコモディティー市場の投機的な取引によって劇的なものとなっている。

21年夏にECBが完了した戦略検証が主に「低インフレ問題」に対応したものであったことを考えると、皮肉な展開だ。ECBはインフレ抑制へ7月の次回会合での利上げが既定路線となっている。しかし、戦略検証で示した新たな方針は捨てるべきではない。

利上げは大きなリスクを伴う政策だ。いきなりの大幅利上げは、遅かれ早かれ経済活動の急激な停滞をもたらす。むろん、しっかりとした引き締めを行えば物価を引き下げることはできるだろうが、金融市場や消費、企業投資、雇用に副作用が出るのは避けられない。

今そこにある未来

ECBがどう利上げを行うかで、欧州経済の今後数十年の形が決まるということだ。未来のインフレショックに先手を打つには、クリーンエネルギーの生産や省エネ、増加する異常気象への適応に必要な投資をいま行わなくてはならない。目先のインフレ抑制のためにこうした投資をケチれば、気候変動に関連した厳しいショックに対し、欧州連合(EU)はさらなる脆弱性を抱え込むことになる。

そうした結果とならぬよう、ECBの利上げは新たな戦略を反映させたものとするべきだ。何しろ、ECB理事会は「気候変動と脱炭素が金融政策と中央銀行業務にもたらす影響を十分に考慮する」という決意を示しているのだから。